経済・社会

2025.12.19 10:45

Made in Japan の共創モデルを世界標準に 「つなげる30人」が描くソーシャル・インターネットの未来

インターネットが情報の移動速度を高め、スマートフォンが行動様式を変え、いま、AIが知の創出のあり方を変えつつある。

次に変わるのは——人と人、街と街、地域と地域、行政と企業と市民の“つながり方”かもしれない。


多様な主体が協働する「共創」は、いまやあらゆる場面で求められている。しかし、多くの現場はまだ経験則に頼り、成功事例は生まれても「再現性」に課題を抱え、世界的な「共創の標準」の定義はまだ定まっていない。

だが、アメリカがインターネットの標準を牽引し、北欧モデルが環境政策の国際基準となったように、“共創モデルの標準”を日本から発信し、世界に提示できる可能性があるのではないかと考えている。

2016年、渋谷区から始まった「つなげる30人」は行政、企業、NPO、市民、大学——立場も年齢も専門も異なる人々が「地域の未来を共に創る」という点でゆるやかにつながり、独自のメソッドで小さな共創アクションを積み重ねてきた。その結果、この10年間で約20地域に広がってきた。

なぜ従来の「共創」は失敗するのか

企業や行政主導の「共創プロジェクト」の多くが、同じパターンで行き詰まる。

・契約とKPIに基づいて動き、信頼関係が育たないまま進行する
・目立った成果が出ないまま形式的な報告書だけが残る
・契約期間の終了とともに関係も解消される

ここ2年は実践する各地域同士をつなぐ挑戦を暗中模索で重ねてきたが、地域同士が共創するための、独自のメソッドの骨子も少し見えてきた。

なぜ「つなげる30人」では再現できることが、他のプロジェクトでは再現できないのか。その答えは、日本のインターネット黎明期の思想の中にあった。

インターネットに学ぶ「つながり方」の本質

著者は、大学はSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)で過ごし、新卒ではIIJ(株式会社インターネットイニシアティブ)に進んだ。

SFCは「日本のインターネットの父」である村井純氏が深く関わった学校であり、IIJは日本で初めて商用インターネットを提供した企業だ。が、この時点で学んだ「日本のインターネット黎明期」の思想などは直接的に私のその後のキャリアに何か影響を与えてはいなかった。

しかし、「つなげる30人」の活動を10年続ける中で、各地の共創の成功・失敗の構造を観察しているうちに、当時の経験や知識が突然意味を持ち始めた。

簡単に言うと、インターネットと言うのは、元々、米国の複数の大学・研究機関のネットワークを相互接続するために生まれた。その際に鍵となったのが、異なるネットワーク同士をつなぐための共通言語(標準プロトコル)となるTCP/IP(Transmission Control ProtocolとInternet Protocolという、 二つの通信プロトコルを総称したもの)の開発と世界的な共有だ。

このプロトコルを採用していなければ、たとえ建物が隣り合っていても、ネットワーク同士は決してつながらない。物理的距離ではなく、“つながり方のルール”こそが接続を可能にしたのである。

なお、「つなげる30人」の地域展開は、インターネットの「自律・分散・協調」という原理と深い共通項を持つが、今回はそこまで踏み込まず、別稿に委ねたい。

4期日を迎えた福井県敦賀市の様子
4期日を迎えた福井県敦賀市の様子
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文= 加生 健太朗

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