経済・社会

2025.12.19 10:45

Made in Japan の共創モデルを世界標準に 「つなげる30人」が描くソーシャル・インターネットの未来

(3)「楽しさ」が最大の原動力、「正しさ」は後づけで良い

【従来の共創】 「収益性」「前例の有無」「予算・補助金の要件適合」といった「正しさ」が事実上の共通プロトコルとして機能し、それに適合する企画や人が選別される。結果、想いが乗らない、誰のためかわからないプロジェクトが生まれる。

advertisement

【つなげる30人】 「これ、面白いよね」「この人たちと、こんなことをやってみたい」という内発的な「楽しさ」をベースに企画を立ち上げる。その後に、社会や組織に説明するための「正しさ」を言語化していく。

事例:広島の「傘鶴(さんかく)」プロジェクト

株式会社ロジコムの大杉氏は、本業の物流・倉庫業とは直接関係の薄い、広島に届く折り鶴を原材料とした「和傘」のプロジェクトを、社内の理解と協力を得ながら立ち上げた。やがてG7広島サミットで披露するまでに至った。

advertisement

この挑戦の出発点は、「SDGsとして評価されたい」でも「新規事業として成立しそう」でもなく、「折り鶴を使われる形で残せたら面白い」「伝統文化とコラボレーションしたら面白そう」という情熱や好奇心だった。走り出した挑戦に、後から社会的な意味と事業的価値が静かに宿っていったのである。

傘鶴と大杉さん
傘鶴と大杉さん

「ソーシャル・インターネット」という未来

インターネットが情報の移動速度を高め、スマートフォンが行動様式を変え、AIが知の創出のあり方を変えつつある今、私たちは共創のための「標準プロトコル」を実装できず、「形式的な共創ごっこ」を繰り返している。

そのような中で、もし、今後、「つなげる30人」が大事にしてきた共創のための「標準プロトコル」が、Made in Japanの“共創モデル”として、発信し、世界で標準化されたなら、人と人、街と街、地域と地域、行政と企業と市民が、まるでインターネットのように接続される時代が来るかもしれない。

いわば暫定的に表現するならば社会同士を繋げていく「ソーシャル・インターネット」だ。

「つなげる30人」が磨き上げてきた共創のプロトコルが、「ソーシャル・インターネット・プロトコル」として国境を越えて適用されたら、多様な主体が混在する都市経営や、国境を越えた社会課題の現場や、紛争地における関係修復などにも貢献していけないだろうか。

世界が「社会のつなげ方」を再定義する局面を迎えるとき、日本の地域から生まれたこのモデルが世界標準のプロトコルとして共有されるなら、人と社会の「接続のしかた」は、次の段階へと進むだろう。

文= 加生 健太朗

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事