「つなげる30人」が考える共創の「標準プロトコル」とは
この構造が、企業・行政・NPO・市民といった、多様な価値観と制度が混在する社会領域における「共創の成否」と同じなのではないかと感じ、「つなげる30人」が10年間かけて醸成してきた文化やメソッドを「標準プロトコル」とするなら、どう言語化出来るだろうか検証を重ねたところ、結果的に見えてきたのは、あまりにも「人間」として当たり前な驚くほどシンプルな3つであった。
(1) 組織ではなく「個人の想い」を最優先する
(2)「信頼関係」を先に積み上げる。「成果」は、すぐに出なくてもいい
(3)「楽しさ」が最大の原動力、「正しさ」は後付で良い
つまるところ、その本質は「街の同級生」のような関係性がベースになるという事である。
それぞれを具体例も交えながら、説明していきたい。
(1)組織ではなく「個人の想い」を最優先する
【従来の共創】 所属や肩書から出会い、「儲かりそうな人」「役に立ちそうな人」とのつながりが優先される。
【つなげる30人】 損得勘定を抜きにして、完全に一人の「人」として出会う。所属や役職ではなく、個人としての「街への想い」や違和感、未来への願いといった内面から対話を重ねる。
事例: 渋谷では、不登校児を持つフリースクール運営者と、原宿発祥のアパレル企業ビームスの社員が出会い、共感し合うことで、これまで行政のサポートだけでは実現が難しかった不登校児の職業体験を支援する取り組みが生まれた。
(2)「信頼関係」を先に積み上げる。「成果」は、すぐに出なくてもいい
【従来の共創】 KPIやアウトプットから逆算し、契約関係に基づいた上下関係の中で動く。共通の作法や信頼という「共通プロトコル」が育たないままプロジェクトだけが進行する。
【つなげる30人】 まずフラットな関係性をつくり、その上に信頼と行動が生まれることを最優先にする。学生時代の同級生や組織の同期のような、心理的安全性の高い関係性を丁寧に育む。
この一見遠回りに見える「共創の土壌づくり」を何より重視した結果、補助金や単年度契約といった外的要因に依存せず、アイデアを生み出し続けられる関係性が内側から育っていく。
事例: 福井県敦賀市では、プログラム修了後もOB・OGが20人近く運営ボランティアとして関わり続けている。名古屋で生まれた「夜さんぽ」は、プログラム終了から5年が経過した今も、メンバーの異動や転勤を経ながら活動が継続している。


