原料価格の高騰が、日本酒の収益を大きく揺さぶっている。
帝国データバンクが実施した「清酒製造業業界動向調査」によると、2024年度の日本酒蔵元・約1000社の売上高合計は約3800億円となり、前年度をわずかに上回った。売上高は3年連続で増加し、コロナ禍以降の5年間で最高水準を更新した。
一方で、利益面では厳しい結果が浮かびあがった。2024年度の利益合計は93億円にとどまり、前年度の125億円から25.6%減少した。売り上げは伸びているにもかかわらず、利益が大きく減少するという構図が鮮明になった。

蔵元ごとの業績をみると、「増収」となった企業は約3割にとどまり、「前年度並み」が約半数を占めた。利益面では、「減益」が28.1%、「赤字」が35.7%となり、両者を合わせた「業績悪化」は6割を超えた。業績悪化の割合が6割を上回るのは2021年度以来、3年ぶりである。
この背景にあるのが、原料価格の高騰だ。酒造りに欠かせない酒米をはじめ、エネルギー費、人件費、物流費など製造に関わるコストが一斉に上昇した。とくに普通酒に使われる加工用米の価格上昇は著しく、吟醸酒などに用いられる山田錦をはじめとする酒造好適米も不足感が強まっている。
また、主食用米の価格上昇を受け、農家が酒米から主食用米へと作付けを転換する動きもみられ、酒米の必要量を確保できず、仕込みを断念したり製造量を抑制せざるを得ない蔵元も出ている。




