海外やインバウンドでは人気のSAKE
こうした中、売り上げを下支えしたのがインバウンド需要と海外市場だ。日本酒、いわゆる「SAKE」の国際的な認知度向上を背景に輸出が伸びたほか、訪日客を中心に蔵元見学や試飲イベント、酒造り体験といった「コト消費」への関心が高まった。インバウンド需要は、日本酒業界にとって重要な起爆剤となっている。
ただし、この追い風が今後も安定的に続くかどうかは見通せない。為替や国際情勢、訪日客数の変動など外部要因の影響を受けやすく、需要に波が生じる可能性があるからだ。海外需要とインバウンドに依存するのは、あまりにも危うい。
国内では「日本酒離れ」
国内市場に目を向けると、状況はさらに複雑だ。若年層を中心に日本酒離れが続き、居酒屋など客単価が比較的低い飲食店では、高価格帯の日本酒を扱いにくいという声もある。競合するビールや焼酎などは日本酒ほど価格が上昇していないのも「日本酒が選ばれにくい理由」となっているだろう。
一方で、純米大吟醸など特定名称酒へのシフトは進んでおり、ハレの日需要や地域性。また酒米・製法にこだわるコアなファン層向けの高付加価値がある商品は一部で堅調に推移している。
2024年度は、こうした課題が「価格」という形でより顕在化した年でもあった。酒米の高騰に加え、瓶やラベル、配送費用などのコスト負担も重く、現状の利益率を維持するためには販売価格の見直しが避けられない状況だ。実際、2025年に向けて10%以上の値上げを実施した蔵元も少なくない。
今後は酒米の安定供給をどう確保するか、高付加価値への戦略と価格の転嫁をどう両立させるかが、日本酒の未来を左右する重要なテーマとなりそうだ。
個人的には、日本人が日常的に気負わずに楽しみ、ときどき特別な一杯として選ぶことこそが、世界が誇る美酒「SAKE」を支える源になると思っている。年末年始は、ぜひ特別な一杯で乾杯を。


