岡山市・能楽堂ホールtenjin9を会場に、8月末に開催された「SETOUCHI Design Conference 2025」。その日6つ目となる最後のセッションは、『プロジェクト海島』をテーマに語られた。
登壇者は、神原勝成(ツネイシHD代表/神原財団理事長)、小林史明(衆議院議員環境副大臣)、原研哉(日本デザインセンター 代表)、藤本壮介(藤本壮介建築事務所代表)、松田敏之(両備HD代表)、渡邉敦(笹川平和財団部長)。モデレータは小島レイリ(Tokyo Gendaiディレクター)。彼らが取り組む「海島」とは一体なんなのか──。
始まりはおよそ3年前。「瀬戸内デザイン会議」にゲストスピーカーとして参加する藤本壮介に、原研哉が船のデザインを依頼したことだった。
原と付き合いの長い藤本は、「ただかっこいいデザインするのとは違うだろう」と察し、船の概念から問い直して「船でも島でもない、その中間のような何か」を2案提示。それが会議で「海島」と名付けられた。
当初、直径100mほどの円形で考えていたが、毎年ドッグでの定期検査が必要で、民間最大のドッグは幅44mであると判明し、楕円形に変更。ホテルやカンファレンス場を備えるかたちで、藤本が模型や図面を作成している。
岡山を中心に陸海交通を手掛ける両備ホールディングスの松田敏之は、自社のクルーズ事業の実績を踏まえ、必要コストを400億円と試算。船はマンションのように区分登記ができないが、共有持分に占有権をつけて分譲する手法を用い、「客室計1990坪を400億円で割り戻すと、坪単価は2000万円。22部屋に買い手がつけば実現できる」と話す。都心の高層マンションもそれぐらいすることを考えると、藤本が手掛ける洋上物件の価格は割安にも映る。
「自走でも引き船でも、瀬戸内を移動し、ホテルや国際会議場として地域をつなぐ役割を担えるように」と藤本。「存在そのものがアートですよね。インターローカルの活性をまともに考えると、新しい機能をもつ海島には大きな可能性がある」と原。
資金が集まり、動き出すか。夢の実現を楽しみに待ちたい。



