AI

2025.12.19 15:00

手術支援ロボ「ダ・ヴィンチ」生みの親、フレッド・モルが次世代の医療新興に155億円投入

フレッド・モル医師(Photo by Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

フレッド・モル医師(Photo by Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

手術支援ロボットの世界的代名詞「ダ・ヴィンチ(da Vinci)」を世に送り出し、時価総額2000億ドル(約31兆円。1ドル=155円換算)のIntuitive Surgical(インテュイティブ・サージカル)を築き上げた伝説の起業家、フレッド・モル医師(73)。メドテック界のカリスマであるモルは現在、1億ドル(約155億円)もの私財を投じて次世代の医療スタートアップ15社の育成に奔走している。その狙いは、かつての「低侵襲手術(体に負担の少ない手術)」の普及を超え、AIと遠隔操作技術によって「世界中の誰もが最高水準の手術を受けられる未来」を実現することにある。もはやモルは、単なる「引退した名医」ではなく「現役のレジェンド投資家」といえる。巨万の富を築いた後もなお、手術のあり方を根本から再定義しようとするレジェンドの新たな野心に迫る。

フレッド・モル、次世代の手術ロボ関連スタートアップに155億円を投じる

フレッド・モルは40年以上前に臨床医の現場を離れたが、今もなおダ・ヴィンチによる年間約300万件の手術に間接的に関わっている。ロボット手術分野の最大手で、世界に1万台超の手術支援ロボットを展開するIntuitive Surgicalの売上高は、2024年に84億ドル(約1.3兆円)に達した。

同社の創業から30年近くが経ち、自身がIntuitive Surgicalを離れて新たな企業を立ち上げてから約25年が経った今、モルは自身の約1億ドル(約155億円)の資金を、次世代の手術ロボット関連のスタートアップに注ぎ込んでいる。

投資対象は大腸内視鏡検査や白内障手術、心臓弁置換など多岐にわたる。将来的には、こうした処置を含む多くの医療行為がロボットによって支援され、過去の類似ケースで何がうまくいき、何がうまくいかなかったのかを分析する人工知能(AI)によって、時間とともに改良されていくとモルは見ている。その目的は、ニューヨークであろうとインドのナーグプルであろうと、誰もが最高水準の医療を受けられるようにすることだ。

ロボットによる手術支援を通じ、外科医の能力を非常に優れた水準に引き上げ

「私はキャリアの大半を、他の人が手術をするのを見て過ごしてきた。優れた外科医と平均的な外科医の差は、驚くほど大きい」と、モルはフォーブスに語った。「私の目的は、人が苦手とする手術をロボットが担えるようにすることだ。その結果、すべての人が得意ではない手術において、平均的な外科医の能力を、非常に優れた外科医のレベルまで引き上げることにある」。

次ページ > 脳外科や心臓弁の置換など、多岐にわたる医療分野でロボットによる支援が進む

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事