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2025.12.19 15:00

手術支援ロボ「ダ・ヴィンチ」生みの親、フレッド・モルが次世代の医療新興に155億円投入

フレッド・モル医師(Photo by Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

手術支援ロボのダ・ヴィンチによる先行者利益を活かし、圧倒的な市場支配力を構築

ナスダック上場企業で、時価総額が2000億ドル(約31兆円)に達するIntuitive Surgicalの成功の背景には、手術支援ロボット分野の先行者であることが挙げられる。2000年に手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を投入した同社は、他社に先駆けて市場を切り開いた。ダ・ヴィンチを用いた手術では、外科医が操作用コンソールに座り、高精細な3D画面で患部を確認する。人の体に開けた小さな切開部から挿入できる手術器具を備えたロボットが、医師の手の動きを精密に再現する仕組みだ。

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この業界で30年にわたって数多くの事例を見てきたモルには、投資しないと決めている分野がある。Intuitive Surgicalの製品に酷似した、「二番煎じ」のロボットを開発する企業だ。

「ロボティクスの世界には、うまくいかなかった企業が山ほどある」とモルは語る。「彼らに共通するのは、『Intuitive Surgicalほどの評価額にはならなくても、同じ方向性で、もう少し小さな規模でも十分だ』と考えた点だ。しかし彼らは、重要なのが臨床上の実力だということを理解していない。外科医はダ・ヴィンチのロボットと日常的に向き合っている。別の機器を使うのであれば、そのための明確な理由を求めるのだ」。

Da Vinci 5 surgical system(c)Intuitive
Da Vinci 5 surgical system(c)Intuitive

私が若い頃に強く惹かれたのは、ロボティクスではなく低侵襲手術だった

モルがロボットに強い関心を抱いたきっかけは、実はロボットそのものではなかった。1980年代、ワシントン大学医学部を卒業したばかりの若手医師だった頃で、腹腔鏡手術はまだ黎明期にあった。バージニア・メイソン・メディカルセンターで外科研修医として過ごす中でモルは、カメラを用いて小さな切開で行うこの新しい手術手法が、なぜもっと広く普及していないのか疑問に思うようになった。「私が若い頃に強く惹かれたのは、ロボティクスではなく低侵襲手術だった」とモルは語っている。

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彼は、臨床医としての道をそのまま歩むのではなく、外科研修を離れ、腹腔鏡の鋭利な先端による患者への損傷を防ぐ「セーフティ・トロカー」と呼ばれる器具の開発に乗り出した。その後、腹腔鏡手術分野で2社を創業し、うち1社をユナイテッド・ステーツ・サージカルに、もう1社をイーライリリーに売却した。「十分な成功を収めたことで、起業と発明に取りつかれた」とモルは振り返る。その後、スタンフォード大学で経営学の修士号を取得した。

1990年代初頭、モルは、スタンフォード大学から独立した研究組織スタンフォード研究所(現在のSRI インターナショナル)が、戦場にいる兵士を遠隔で手術する研究に取り組んでいることを知った。この遠隔手術では、野戦外科病院(MASH)部隊の外科医が、離れた場所にある外傷治療ユニットに詳細な指示を送り、その外科医の手の動きが患者の体に反映される仕組みを模索していた。

設置台数1万台超で手術件数は累計1400万件、年間の売上高は約1.5兆円にまで成長

「最初に思ったのは、『なぜこれを腹腔鏡手術に応用できないのか』ということだった」とモルは語る。当時、外科医は操作性に乏しい長い器具を使って手術を行うことに苦労していた。そこで彼は、手術器具を保持する機械式の手首を備えたロボットであれば、外科医の手の動きを正確に再現できると気づいた。

1995年、モルはこの構想を実現するため、元投資銀行家のジョン・フロイント医師、電気エンジニアのロバート・ヤングとともにIntuitive Surgicalを共同創業した。それから5年後、同社は泌尿器科、婦人科、心臓胸部外科、頭頸部外科に加え、一般外科でも使用できる手術支援ロボットとして「ダ・ヴィンチ」を市場に送り出した。

今や手術支援ロボット分野の主要プレーヤーとなったIntuitive Surgicalは、2025年の第3四半期決算で、ダ・ヴィンチの設置台数が1万763台(2025年9月時点)に達したと発表した。これは2024年の9539台から13%の増加だ。これまでに同社ロボットで行われた手術件数は、累計1400万件を超えた。直近12カ月(9月30日まで)の売上高は96億ドル(約1.5兆円)と、前年同期の79億ドル(約1.2兆円)から22%増加した。

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翻訳=上田裕資

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