脳外科や心臓弁の置換など、多岐にわたる医療分野でロボットによる支援が進む
そうした手術の1つが、並外れた精度が求められる脳外科手術だ。モルは、2025年11月にパナマで人に対するロボット支援の脳動脈瘤手術を世界で初めて実施したXCathで会長を務めると同時に、同社に出資している。XCathの評価額は、ピッチブックによれば6200万ドル(約96億円)とされる。
XCathのCEO、エドゥアルド・フォンセカは、モルがロボットを「医師にとって複雑すぎるもの」にしないよう助言してきたと語る。「自分たちの技術を成功させたいなら、モルの言葉には本気で耳を傾けるべきだ。時間が経てば彼が正しかったことが証明される」とフォンセカは述べた。
モルはまた、消化管手術向けロボットを開発するNeptune Medical(評価額3億8700万ドル[約600億円])、そのスピンアウト企業Jupiter Endovascularにも投資している。白内障手術向けロボットを開発するイスラエル企業ForSight Robotics(評価額5億ドル[約775億円])、自律型の採血を手がけるオランダ企業Vitestroにも資金を投じてきた。
モルは、カリフォルニア州サンタクルーズ拠点のCapstan Medical(評価額3億6700万ドル[約569億円])にも可能性を見いだしている。同社は、極めて難易度の高い僧帽弁置換術(MVR)を、ロボットで支援する仕組みを開発している。これら企業はいずれも初期段階にあり、開発中、あるいは一部は米国外で販売可能な段階にとどまっている。
「彼は、ロボティクスがどこまで進化し得るのかについて、常に先を見据えてきた人物だ」と語るのは、Capstan MedicalのCEO、マギー・ニクソンだ。彼はキャリア初期にIntuitive Surgicalで働いていた。「モルが最も力を発揮するのは、まさにこうした初期段階の分野だと思う」と続けた。
外科医が遠隔地から手術を行える技術を持つ、インドの手術向けロボット開発企業に出資
モルが出資してきた企業のうち最も規模が大きいのが、インド・グルグラム拠点のSS Innovations Internationalだ。同社は心臓外科、泌尿器科、婦人科など、幅広い分野の手術向けロボットを開発する上場企業で、時価総額は12億ドル(約1860億円)に上る。外科医が遠隔地から手術を行える点も、同社技術の特徴の1つだ。
SS Innovations創業者のスディール・スリヴァスタヴァ医師は2025年11月、ニューデリーの自宅から、ロボット支援による冠動脈バイパス手術を遠隔で実施した。患者は、約300キロメートル離れたインド北西部ジャイプールにいた。こうした海外での遠隔手術は近年増えており、医療資源の乏しい地域に住む人々が治療を受けられる可能性を広げている。「このような手術に不安を覚える人もいるかもしれないが、私は、この分野に関しては懐疑派から信奉者に変わった」とモルは述べている。
新興企業の創業者にとって、投資家や助言者、あるいは取締役としてモルが関与することは、いわばお墨付きのような意味を持つ。モルは個人としての出資に加え、自身が共同創業者兼パートナーを務める小規模ベンチャーファームSonder Capitalを通じても投資を行っている。同社は初期段階の医療テクノロジースタートアップへの投資に特化している。
フォーブスは、モルの資産額を5億ドル(約775億円)超と推計している。また、仮に彼がIntuitive Surgicalの株式を一度も売却していなかった場合、その保有株の価値は33億ドル(約5115億円)に達していたと試算している。


