リーダーシップ

2025.12.19 16:00

リーダーに必要なのは「見落としているかも知れない」という視点 自己疑念で判断力を高める方法

Shutterstock.com

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自信は、リーダーシップの絶対的基準として扱われることが多い。人はリーダーが確信を示し、迅速な判断を下し、ためらうことなく前進することを期待する。少なくともそうした固定概念がある。だが、混沌とした曖昧な状況を率いた経験のある人なら、そうした期待がどれほど非現実的なものかを知っている。完璧な明晰さを持つリーダー、毎回正しい判断を下せるリーダーはいない。そして、正しい判断を下せるかのように装うことは問題を解決するのではなく、問題を増やすだけだ。

そうしたときに役立つのは、自己疑念だ。不安に陥る類のものではなく、自分の見方は完璧だと決めつける前に立ち止まる類のものだ。わずかな疑念を抱くリーダーは、警戒心を保つ傾向にある。多くの質問をし、自分の視点だけに頼らず別の視点を模索する。

こうしたリーダーの傾聴の姿勢には、違いが表れる。わずかな疑念を抱くリーダーは、人の話を遮らない。説得力があるように聞こえる最初の答えに飛びつかない。確信が複雑さを隠すことが多いと知っているからこそ、好奇心を持ち続ける。そして十分に注意を払っていると、特に他人が見落とすようなパターンに早く気づく。

自信とともに保たれる適度な自己疑念は、リーダーシップの優位性となる。傲慢になることを防ぎ、意思決定がエゴではなく現実に根ざしたものになる。

自己疑念が優れた判断力を育む仕組み

自己疑念は、認知の速度調整装置のように機能する。選択肢を検討できるように、思考のスピードを遅らせる。心理学者はこれをメタ認知、つまり自分の思考について考える能力だと指摘する。これを巧みに行うリーダーは、最初の解釈が正しいと決めつけない。検証し、試行錯誤する。話している相手が、自分に見えていない何かをとらえていないか問いかける。

これは、環境が急速に変化する時に特に役立つ。過信によって、リーダーは古い専門知識に固執する。自己疑念は学びへと導く。研究者が、「能力の過大な確信」と呼ぶ罠に陥るのを防ぐ。自分にはできるはずだという思い込みは、リーダーが一度は機能したが、もはや適合しない枠組みに依存する状態だ。

かすかな疑念を抱くリーダーは、成長志向の考え方を取り入れる傾向がある。失敗をデータとして扱う。完璧なイメージを守ろうとしないため、実験を多く行う。何が機能するかを、理解しようとしているのだ。このオープンさが、チームに心理的安全性をもたらす。リーダーが思慮深い不確実性を示すと、他の人は用心深く振る舞うのではなく、本音を語りやすくなる。

結果として意思決定が良いものになる。必ずしも迅速ではないが、より多くの視点を取り入れることで盲点が減るため、吟味に耐える決断となる。

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翻訳=溝口慈子

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