割高なバリュエーション
歴史的な評価水準に照らすと、米国の株式市場は割高である。ウォーレン・バフェットは、S&P500のバリュエーションを米国経済の規模、すなわち国内総生産(GDP)と比較する指標を好んで用いる。世界銀行のデータによれば、現在の同指数のバリュエーションは、米国経済の規模のおよそ2倍に達している。これは1980年以降で最も高い水準だ。
利益に対する評価という観点でも、バリュエーションは高い。この観点で見たS&P500のバリュエーションは、2000年のテックバブルのピーク期を除けば、近年のほとんどの時期を上回る水準にある。
もっとも、これは必ずしも株価暴落が差し迫っていることを意味するわけではない。歴史的に見て、株式市場の下落は、単に評価が高いことよりも、ネガティブな出来事をきっかけとして起きる場合が多いのだ。それでもこの事実は、中期的に株式が力強くアウトパフォームし続ける上では逆風となる要因ではある。というのも、株式市場のリターンの大きな部分は、バリュエーションの拡大によって生み出されることが多いためだ。
今後も、株価が歴史的に見られなかった水準まで上昇する可能性は残っているが、その確率は以前より低いかもしれない。もしバリュエーションが平均的な水準へ回帰するのであれば、それはパフォーマンスの重荷となる。
一方で、別の見方もある。すなわち、テクノロジー株が今後も成長を続け、資本収益率の高い卓越したビジネスとして、投資家に莫大な利益をもたらし続ける可能性があるという考え方だ。加えて、現在の米国企業は、AIなどの分野で、近年にも増して世界的な主導的地位を確立している。こうしたトレンドが続くのであれば、S&P500はその恩恵を受けやすい立場にある。
また、バリュエーション指標は、株式リターンの要因としてはせいぜい中期的なものであり、特定の年に市場がどう動くかを予測することはほとんどない。
2026年の見通し
多くの予測が存在するものの、2026年にS&P500がどうなるかを見極めることは、ほぼ不可能である。経済の行方、連邦準備制度理事会(FRB)の意思決定、政府の政策、企業利益の成長トレンドなど、多数の要因が影響するためだ。
ただし、過去の多くの年と比べて、市場全体の命運がテクノロジー株の動向に強く結びついていると考えるのは妥当だろう。現在の米国市場は、歴史的に見てかなり割高ともいえ、その点を踏まえると、過去が参考になるのであれば、中期的なリターンは平均をやや下回る可能性がある。


