人間、どうしても目の前のことに関心が向きがちだ。たとえば世界の外交官たちは今、「トランプ米大統領とどうしたらよい関係を造ることができるか」に神経を集中させている。10月末の日米首脳会談では、高市早苗首相がトランプ氏と非常に良好な人間関係を造った。外務省元幹部は「これで、高市氏が電話をかければ、トランプ氏も受話器を取ってくれるだろう」と話す。トランプ氏の場合、政策理念や哲学が一致するかどうかは問題ではない。「自分を尊敬してくれる」「おもしろい人間だ」といった理由で好き嫌いを決める。高市氏もイタリアのメローニ首相やハンガリーのオルバン首相、アルゼンチンのミレイ大統領のように、「トランプお気に入りの人物」に加えられたようだ。
ただ、各国政府はまずは、トランプ政権の間、どうやって生き抜くかに集中しているが、「トランプによって変わった世界」にどう対応するかまで頭が回らない。米国人権団体の知人は「トランプのおかげで国際社会での米国の名声は地に落ちた。トランプ政権が終わっても、米国は世界のリーダーとしての地位に復帰できないだろう」と語る。日本政府は「米国がリーダーではない世界」とどう向き合うかについての答えを示していない。
映画は最後に意外な展開を見せる。マクドナルド監督は「バーバラは麻薬取引を利用する必要などない。(亡母から受け継いだ)家を手放すことが必要だった」と語る。世界も果たして今後、「トランプのご機嫌などとる必要はなかった。トランプ的な考え方や行動から離れることが必要だった」と気づくことになるのだろうか。


