映画

2025.12.16 16:15

人生は試行錯誤の連続 映画『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』

スイスの山間部の小さな町で暮らすお針子バーバラ(イヴ・コノリー)(c)Sew Torn, LLC 『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』 12月19日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開

人間、どうしても目の前のことに関心が向きがちだ。たとえば世界の外交官たちは今、「トランプ米大統領とどうしたらよい関係を造ることができるか」に神経を集中させている。10月末の日米首脳会談では、高市早苗首相がトランプ氏と非常に良好な人間関係を造った。外務省元幹部は「これで、高市氏が電話をかければ、トランプ氏も受話器を取ってくれるだろう」と話す。トランプ氏の場合、政策理念や哲学が一致するかどうかは問題ではない。「自分を尊敬してくれる」「おもしろい人間だ」といった理由で好き嫌いを決める。高市氏もイタリアのメローニ首相やハンガリーのオルバン首相、アルゼンチンのミレイ大統領のように、「トランプお気に入りの人物」に加えられたようだ。

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ただ、各国政府はまずは、トランプ政権の間、どうやって生き抜くかに集中しているが、「トランプによって変わった世界」にどう対応するかまで頭が回らない。米国人権団体の知人は「トランプのおかげで国際社会での米国の名声は地に落ちた。トランプ政権が終わっても、米国は世界のリーダーとしての地位に復帰できないだろう」と語る。日本政府は「米国がリーダーではない世界」とどう向き合うかについての答えを示していない。

映画は最後に意外な展開を見せる。マクドナルド監督は「バーバラは麻薬取引を利用する必要などない。(亡母から受け継いだ)家を手放すことが必要だった」と語る。世界も果たして今後、「トランプのご機嫌などとる必要はなかった。トランプ的な考え方や行動から離れることが必要だった」と気づくことになるのだろうか。

フレディ・マクドナルド監督(c)Sew Torn, LLC 『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』 12月19日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開 
フレディ・マクドナルド監督(c)Sew Torn, LLC 『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』 12月19日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開 

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文=牧野愛博

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