キャリア

2025.12.17 12:00

Z世代だけじゃない出世を望まない働き方 「キャリア・ミニマリズム」が新常識になりつつある理由

Shutterstock.com

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求人サイトのGlassdoor(グラスドア)が、米国で働く人たち1000人以上を対象に、2025年7月に実施した調査によると、「給料か地位が変わらないかぎり、管理的な仕事は追求しない」と答えたZ世代(30歳頃までの世代)は68%に上った。 

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若い人たちは野心がない、と思う人もいるかもしれないが、実のところ、そうではない。Z世代は「キャリア・ミニマリズム」という形で職業的な成功を再定義している。仕事を安定の源ととらえる一方で、従来の仕事以外の場で、野心や創造性を追求しようとしているのだ。

こうした考え方を世に広めたのは、Z世代だと言えるだろう。しかし、ミレニアル世代やX世代、ベビーブーマー世代もまた、それぞれ特有の理由から、キャリア・ミニマリズムを選択している。このような変化の背景には、昇進制度の破綻、燃え尽きる人の増加、人生における仕事の位置づけを自分でコントロールしたいという欲求の高まりがある。

以下ではキャリア・ミニマリズムが、Z世代に限らず幅広い世代にも広がっている理由を説明していこう。

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1. 企業の昇進制度は破綻している

従業員は何十年も前から、予測可能な道を歩んできた。つまり、熱心に働いて出世する。プライベートの時間は諦めるが、その見返りとして長期的な安定を得る、という道だ。しかし今はそうした道が、以前と比べ確実なものではなくなっている。

この変化を加速させている要因には、以下のようなものがある。

・出世とは名ばかりで、責任だけが増えて昇給が伴わない。
・エンゲージメントの低下──Gallup(ギャラップ)の調査によると、仕事に心から没頭している従業員はわずか21%だ。
・高収入の企業やリモート勤務の職であっても、以前ほど雇用が安定していない。
・AI(人工知能)の導入を機に、人員削減が始まり、既存のキャリアパスが混乱している。

グラスドアのチーフエコノミスト、ダニエル・ザオはこう話す。「いくら努力し、どれだけ成果を上げても、それに見合った報酬を得られていない、と従業員の多くが感じている」

リーダー職は、業務量が増えてもサポート体制が先細りすることが多い。経済的に報われるかどうかがわからなければ、世代を問わず、出世する魅力が薄れてしまう。

2. 副業には、会社では得られない魅力がある

副業を持つ人の割合は、Z世代だと57%だ。また、ミレニアル世代の48%、X世代の31%も副業を持っている。Z世代の傾向だと思われていた副業が今では、世代を問わず広がっているわけだ。

副業には、次のような魅力がある。

・企業の枠組みと関係なく、自律的に意思決定ができる。
・年に1度の評価を待たずに、すぐさま金銭的な見返りが得られる。
・組織の優先事項ではなく、自分個人の興味関心に合致した仕事ができる。
・収入源が多様化でき、1つの雇用主への依存度を下げられる。

副業の広まりに拍車をかけたのは、テクノロジーだ。デジタルプラットフォームやAIツール、リモートで働くフリーランサー向けマーケットプレイスなどのおかげで、自らのスキルや情熱を生かした収入源を得られるようになった。

経済がかなり不安定であることも、この傾向の一端を担っている。インフレや金利上昇、断続的に行われる人員削減によって、多様な収入源を得ることは、選択肢というよりむしろ、安定を手に入れるための現実的な方策となっている。

多くの人にとって副業は、単なる追加の収入源ではない。本業よりも努力や創意工夫、主体性がはるかに目に見える形で報われる場となっている。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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