6. リモート勤務が、キャリア・ミニマリズムへの流れを加速
リモート勤務も、キャリア・ミニマリズムの拡散を後押ししている大きな要素の一つだ。言うまでもないことだが、求職者のあいだではリモート勤務できる仕事の方が人気が高い。そのため、リモート勤務できる職に空きが出ると、「フルタイム出勤が必須の職」と比べて3倍以上の応募が集まる。
人々の期待が変化したのは、リモート勤務に次のような利点があるからだ。
・通勤せずに済み、自分の時間を管理しやすい。
・時間と集中力を消耗する、見せかけだけの業務が減る。
・生産性が最も高い時間帯に働ける柔軟性がある。
・勤務地を自由に選べるため、手頃な生活費で充実した暮らしが実現しやすい。
多くの従業員は、リモート勤務の方がバランスよく効率的に働けることを知った。そうした自主性を経験したため、柔軟性のないオフィス勤務に戻りたいと思う人は大きく減っている。
7. 雇用主も変化を注視
キャリア・ミニマリズムが「働く人と仕事の関係」を変えていることを、企業の側も認識している。これを受けて、以下のような対応に乗り出す企業もある:
・週の勤務日数を減らす。
・会議のない日を設ける。
・職務への期待を、より明確にする。
・社内での異動制度を拡充する。
企業のこうした取り組みからは、従業員が職務を、自主性やウェルビーイングの観点から評価していることに対して、企業でも理解が広がっていることがわかる。従業員のこうした期待に応える企業の方が、競争の激しい労働市場で有能な人材を呼び寄せ、維持しやすいだろう。
「キャリアの成功」に対する新しいアプローチ
キャリア・ミニマリズムがZ世代以外にも広がりを見せているのは、世代を問わず、あらゆる働く人が直面する影響を解決するやり方だからだ。昇進制度の破綻、燃え尽き、キャリアパスの変化、自主性を求める姿勢によって、人々は仕事を、人生のどこにどう位置付ければいいのかについて再検討している。
将来の働き方の中心にあるのは、ひたすら昇進することではなく、個人的な価値観や自分のエネルギー、目標を反映した仕事を選ぶことだ。人々の期待が変化するなかで、多くの働く人たちは、達成感と生活の充実の両方を実現できるキャリアを意識的に構築している。


