Airbnbの「文化戦略」、アートフェアと提携しロイヤルティ強化へ

Airbnbのグローバルパートナーシップ・事業開発責任者のフアン・デビッド・ボレーロ(Photo by Roy Rochlin/Getty Images for PAIGE)

Airbnbのグローバルパートナーシップ・事業開発責任者のフアン・デビッド・ボレーロ(Photo by Roy Rochlin/Getty Images for PAIGE)

「Airbnb」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、いまも「自宅の空き部屋」や「巧みな設計の小型住宅」などかもしれない。だが、同社が提供するものは次第に、宿泊先にとどまらなくなっている。

Airbnbは世界最大規模の文化イベントとの関わりを深め、それを「手ごろな宿泊料金」ではなく「感情的なつながり」を通じた顧客ロイヤルティ構築のためのひとつの手法として、確立させようとしている。

事業戦略におけるそうした変化について、他社とのグローバルな提携と事業開発を担う部門(Airbnbが1年ほど前に新設)のトップ、フアン・デビッド・ボレーロに話を聞いた。

国際イベントとの関係性

Airbnb は「アート・バーゼル」や「ツール・ド・フランス」、音楽フェスティバルの「ロラパルーザ」やスペインのプロサッカーリーグ「ラ・リーガ」、そして「オリンピック・パラリンピック」など、数々の国際的なイベントの運営団体と提携している。それらの中でも特に、アート・バーゼルとの複数年にわたるパートナーシップ契約は、パリ、バーゼル、マイアミビーチなど、世界で最もダイナミックな文化の中心地に焦点を当てたものとなっている。

フランス・パリで開催されたアート・バーゼル・パリ2025のオープニングにおけるルイ・ヴィトンのブース(Photo by Luc Castel/Getty Images)
フランス・パリで開催されたアート・バーゼル・パリ2025のオープニングにおけるルイ・ヴィトンのブース(Photo by Luc Castel/Getty Images)

現実世界での経験と顧客をつなぐ「コネクタ」の役割を果たすものとしてのAirbnbにとって、アート・バーゼルはいくつもの点で重要なイベントだ。このフェアに参加する人は、数千人にのぼる。その大半は、アートやデザイン、文化に深い関わりのある人たちだ。イベントの需要は急速に高まっており、開催地のイベント主催団体は、従来型のホテルだけでは訪れる人たちに十分なだけの宿泊先を確保できないこともある。

さらに、こうしたイベントはAirbnbにとって、ただ宿泊先を提供するだけの機会にとどまるものではない。貸し切りでのギャラリーの見学やスタジオへの訪問、フェアのディレクターによるツアーの開催、デザイナーやクリエイターたちとの面会など、すでに同社の「キュレーション」による独自の楽しみ方を提供している。

そのほかAirbnbは、フェアに参加する新人アーティストと小規模ギャラリーを対象とした新サービス、「アーツ・トラベル・グラント」を開始。資金面でのサポートを提供している。

Airbnbにとって、アート・バーゼルとの提携は多くの意味で、これまで同社が事業において掲げてきた目標の「進化」を反映したものだといえる。当初は「地元の住人たちのように過ごす」滞在の実現を目指していた同社は、現在はアート関連の施設や店舗などが集中する地区への滞在や、キュレーターの案内によるイベントの舞台裏の見学など、顧客が滞在先の「文化の一部になる」体験を提供している。

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編集=木内涼子

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