北米

2025.12.18 14:00

FBIの捜査や巨額罰金を受けるも復活しユニコーン企業へ、予測市場Polymarket:30UNDER30

Polymarketの創業者シェーン・コープラン(Photo by Michael Loccisano/Getty Images)

Polymarketの創業者シェーン・コープラン(Photo by Michael Loccisano/Getty Images)

「世界を変える30歳未満」を部門ごとに30人選出するアワード企画、フォーブス『Forbes 30 Under 30』。次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで、米『Forbes』が2011年より開催し、世界的に注力している企画だ。米国版をはじめ、欧州版、アジア版、アフリカ版など、25カ国・地域で開催し、世界規模へと成長している。Forbes JAPANでも2018年より「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を開催しており、8年間で総計330人を選出してきた。

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また、2025年の日本版はすでに実施済みで、「自分が思うより良い未来」を目指す30人を選出している。

本稿では、2025年に北米版ファイナンス部門で選出された、暗号資産を基盤とする予測市場プラットフォーム「Polymarket(ポリマーケット)」創業者兼CEOのシェイン・コプラン(27)を紹介する。

※編注:本稿は情報提供のみを目的とするものであり、特定の暗号資産や特定サービスの利用を推奨するものではありません。

・日本の場合、暗号資産や独自トークンを業として取引する行為は、日本の金融庁・財務局に登録した暗号資産交換業者が行えます。登録がない暗号資産交換業者において、暗号資産を取引することは推奨しません。暗号資産を取引する際は、金融庁が公開している「暗号資産交換業者登録一覧」をご確認ください

・日本では、選挙・スポーツ・経済イベントを対象とする賭けを含め、オンライン上で行われる賭博行為は、刑法上の賭博罪などの対象となる犯罪とされています。海外で合法的に運営されているサービスでも、日本国内から接続して賭博を行えば賭博罪などに問われる可能性があります。運営者は賭博開帳図利罪など日本の刑法に問われ、刑事責任を負う可能性があります。また、広告・宣伝や決済に関与すると賭博幇助などに問われる場合があります。

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ニューヨーク証券取引所の親会社CEOがコプランに接近、買収ではなく巨額出資で合意

ニューヨーク証券取引所の親会社インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)のCEO、ビリオネアのジェフリー・スプレッチャー(70)は2025年7月、マンハッタンの金融街にある高級レストラン「マンハッタ」の席にいた。60階からニューヨーク市の広大なスカイラインを見下ろすこの店では、ソムリエがテーブルの間を行き交い、ワインを注いでいた。

そこへ現れたのが、シェイン・コプランだった。Tシャツにジーンズというラフな格好で、手にはミネラルウォーターのボトルと途中で買ったベーグルが入った紙袋を抱えていた。スプレッチャーは、少年のようで風変わりなこの起業家を初めて見たときの印象を、笑いながらこう振り返る。

「スーツとネクタイの着用を義務づけているニューヨーク証券取引所で働く、禿げ頭の年寄りの隣に、Tシャツ姿で髪がもじゃもじゃの27歳の男が座っていたんだ」。

だが、スプレッチャーが魅了されたのは、コプランが手がけるブロックチェーンを基盤とする予測市場のPolymarket(ポリマーケット)だった。そして食事の後、彼は切り出した。「君の会社を、私たちに売る気はないかと聞いたんだ」。

Polymarketのような予測市場では、何千人もの一般参加者が将来の出来事に賭けを行う。失業率の行方や、ビットコインがいつ史上最高値を更新するかといったテーマが対象だ。こうした予測を集計すると、いわゆる「集合知」が働き、専門家の分析よりも正しく未来を予測できることがある。実際、Polymarketの参加者たちは、2024年の米大統領選で、多くの政治評論家がカマラ・ハリスの勝利を確実視する中、ドナルド・トランプの勝利を予測していた。

コプランは当初、スプレッチャーからの買収提案を断った。しかし協議はその後も続き、やがて本格的な交渉へと発展した。最終的に合意に至ったのが、ICEによる出資という形だった。10月、ICEは最大25%の株式を取得するため、20億ドル(約3100億円。1ドル=155円換算)を投資したと発表した。

この取引によって、単独で会社を創業したコプランは、経営の独立性を保ちつつ、巨大な金融インフラを後ろ盾にする体制を手に入れた。コプランは最近のフォーブスのインタビューで、両者の関係をこう表現している。「僕たちは消費者に近く、拡散力があり、カルチャーをつくる存在だ。一方で彼らは、金融の中枢を支える巨大インフラだ」。

著名な起業家やミュージシャンが出資に加わり、評価額約1.4兆円のユニコーン企業に

コプランは、他のビリオネアたちからの出資も発表した。参加したのは、Figma(フィグマ)のディラン・フィールド、Zynga(ジンガ)のマーク・ピンカス、ウーバーのトラビス・カラニック、そしてヘッジファンド運用者のグレン・デュービンだ。

長年のレッド・ホット・チリ・ペッパーズのファンでもあるコプランは、共通の知人を通じて、同バンドのボーカルであるアンソニー・キーディスを自宅アパートに招き、最終的に出資までこぎつけたという。「インターホンが鳴って、僕は『マジかよ』って思った」とコプランは振り返る。鮮やかな青い目を見開きながらこう続けた。「彼らの音楽が本当に好きなんだ。自分の仕事のインスピレーションの多くは、普段聴いている音楽から来ている」。

これらの取引を受けて、Polymarketの評価額は一気に90億ドル(約1.4兆円)へと跳ね上がった。これにより、2025年のフォーブス「Forbes 30 Under 30」に選ばれていたコプランは、同社の推定11%の持ち分(約10億ドル[約1550億円]相当)を保有する、世界最年少の自力で富を築いたビリオネアとなった。ただし、その座は長くは続かなかった。そのわずか20日後、22歳の3人の創業者が率いるAIスタートアップMercor(メルコア)が台頭し、彼は「最年少」の称号を失った。

若い起業家が10億ドル(約1550億円)規模の資産を築くスピードは、かつてないほど加速している。Mercorの3人組やコプランに加え、ScaleAI(スケールAI)の共同創業者ルーシー・グオ、Reddit(レディット)のスティーブ・ハフマン、Cursor(カーソル)の共同創業者らを含む、フォーブス「Forbes 30 Under 30」出身者15人が2025年、新たにビリオネアとなった。一方で、グオと共にScaleAIを創業したアレクサンダー・ワンや、ロビンフッドのブラッド・テネフ(いずれも「Forbes 30 Under 30」選出者)は、いったんビリオネアの座から転落した後、2025年になって返り咲いた。

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翻訳=上田裕資

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