14歳から市場に関心を持ち創業するも、FBIの捜索や約2億2000万円の罰金に直面
コプランは、以前から市場とテクノロジーに強い関心を抱いてきた。コプランは14歳のとき、地域の米証券取引委員会(SEC)の事務所にメールを送り、新たな市場をどうやって作ればよいのかを問い合わせていた。「返事は来なかったけど、今振り返るとすごく面白いメールだった」と、当時の自分を思い浮かべながら、いたずらっぽく笑う。「こういうアイデアは、頭の中で10年以上かけて熟成されていくものなんだってことが分かる」。
それから2年後、コプランはインターンの希望を何度もメールで送ったものの無視されたインターネット系スタートアップのGenius(ジーニアス)のオフィスを、アポなしで訪れた。16歳だった彼は、その会社にいる誰よりも少なくとも10歳は若かったが、「荒々しい巻き毛」と「ビリオネアのテック起業家についての百科事典並みの知識」で強烈な印象を残し、初めての仕事を手に入れた。
当時の上司だったクリス・グラゼックは、コプランの大学への推薦状の中でこう記していた。「彼がテック起業家の道に進むとすれば――その可能性は高いが――近いうちに、また彼の名前をメディアで目にすることになるだろう」。
コプランはその後、ニューヨーク大学でコンピューターサイエンスを学んだが、2017年に中退し、いくつかの暗号資産関連プロジェクトに取り組んだ。ただ、それらはいずれも大きな成功には至らなかった。
2020年、彼はPolymarketを創業した。世界に蔓延していると彼が感じていた「誤情報の氾濫」に対する解決策を提示するためだった。同社が最初に開設した市場は、パンデミックのさなかのニューヨーク市がいつ再開するかに賭けを行うものだった。その後、同社は選挙やポップカルチャーの出来事など、さまざまな分野に賭けの対象を広げていった。
だが、Polymarketが規制当局と衝突するまでに、さほど時間はかからなかった。2022年1月、同社は「未登録の市場を提供していた」として、米商品先物取引委員会(CFTC)から140万ドル(約2億2000万円)の罰金を科された。米国内のすべての利用者を遮断することも命じられた。
それにもかかわらず、Polymarketの取引は急増した。特に2024年の米大統領選期間中には取引が爆発的に伸び、賭けの総額は36億ドル(約5580億円)に達した。選挙から1週間後、FBIはこの合意違反の可能性を調べる一環として、コプランの自宅アパートを捜索し、電子機器を押収した。その直後、コプランはXの投稿で、この捜索について「バイデン政権が、政治的な対立相手と結びついていると見なした企業を狙い撃ちにするための、最後の悪あがきだ」との見方を示した。
認可済み取引所の買収によって、米国での合法的な事業展開への道筋をつける
そして2025年7月、司法省とCFTCがいずれも捜査を打ち切った。これを受けて、インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)のジェフリー・スプレッチャーがコプランに夕食を持ちかけた。そしてその1週間足らず後、Polymarketは、米国での合法的な事業展開に備え、CFTCの認可を受けたデリバティブ取引所QCXを買収したと発表した。同取引所は2022年に、連邦政府に登録された取引所としての申請を行っていたが、この申請は3年間にわたって事実上放置されていた。ところが、買収発表の2週間足らず前になって、ようやく承認が下りた。
この取引のタイミングについて問われると、コプランは、2025年1月にトランプ大統領がCFTCのトップに指名したキャロライン・ファム委員長代行の存在を挙げた。「彼女は、理由もなく止められていたすべてのライセンスを、委員長代行に就任して1年も経たないうちに承認した。その点で、キャロラインの功績は非常に大きい」と彼は語る。
フォーブスが取材した関係者によれば、コプランは2021年の時点で、米国で合法的に事業を行うには、すでに認可を持つ取引所を買収するしかないと認識していたという。自社で連邦当局に申請し、承認を待つ通常のルートでは、審査が長期化し、事業展開の見通しが立たないと判断したためだ。
QCXの買収からわずか2カ月後、そしてドナルド・トランプ・ジュニアがPolymarketのアドバイザリーボードに加わってから数日後、同社は米国でのサービス開始に必要な連邦政府の承認を得た。なお、トランプ・ジュニアは1月以降、Polymarketの最大の競合であるKalshiの戦略アドバイザーも務めている。


