産業革命前と比較して世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える目標を掲げた2015年のパリ協定から10年。11月にはブラジルで第30回、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が行われたが、各国の足並みは揃わず、本来、リードすべき立場の米国にいたっては大統領が地球温暖化に「逆行」するなど、先行きが不安視されている。今後、脱炭素化の流れは後退するのだろうか。答えは否だ。
GHG排出量の見える化。グローバルトレンドはどうなっているか。
企業活動に伴う温室効果ガス(GHG)量を測定・報告・管理する炭素会計の分野で世界をリードするパーセフォニ。グローバルCCO兼アジア太平洋地区プレジデントである塚本信二によれば、現況はこう整理される。「温暖化地策に後ろ向きなトランプ政権の影響で見せ方の違いこそありますが、これまで通り多くの企業が前向きに取り組んでいます」。
その背景には、GHG算定や開示義務がすでに一定程度浸透しているからという事情があり、実際にEU・豪州・シンガポール では、すでにGHG の算定・記録・報告が義務化されている。日本でも、サスティナビリティの日本版の情報開示基準『SSBJ』に基づき2027年3月期から時価総額3兆円以上の企業に開示義務が課されるようになる。この情報開示は次年度には1兆円以上、翌年度は5000億円超と対象は急速に広がる。
「ここで見落としてはならないは、大企業だけが対応すればよいという時代はすでに終わりを迎えつつあることだ」と、塚本は強調する。どういうことか。
「うちは関係ない」が通用しなくなる
企業活動に伴うGHG排出量の把握に際しては、一般にスコープ1〜3の分類が知られている。1は自社の直接排出、2は自社で使用した電気や熱といったエネルギー会社などの間接的な排出と自社の事業活動により計測するもの。残るスコープ3が自社外のサプライチェーンの排出量となる。
ここ数年で、頂点企業(大企業)を対象にした算定・開示にとどまらず、サプライヤーへの算定要求が本格化した。これによりSSBJ 開示義務の対象となる頂点企業は、当然ながら自社の排出量をスコープ1〜3まで算定・開示しなければならなくなり、その影響で近年では、開示義務のある企業自身がサプライヤーに対して、GHG排出量の算定・開示を求める「サプライヤーエンゲージメント」が急速に進んだ。



