自社のGHG排出量がわかりますか。中小企業も他人事ではない「炭素会計」の今

炭素会計で「成長のエンジン」をかける

先駆的な活動によって、日本でも知られる存在になったパーセフォニだが、日本にルーツをもつケンタロウ・カワモリが創業してからまだ5年目の企業である。しかし、本社のある米国をはじめ、欧州やシンガポール、日本にベトナムと事業範囲は世界に広がり、既に330億円を調達するなど市場からの期待も高い。急拡大した理由を聞くと2つあるという。

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「ひとつが開発力です。一般的なスタートアップは技術開発に調達金額の30から40%くらいしか割きませんが、当社は50%から60%を当てています。次年度の第一四半期にも、サプライチェーンのリスク検知を行うソフトと、AIを活用する上での情報漏洩を防ぐソフトの2つのリスク対策のサービスを新たにリリースするなど高い技術力が強みです」

また、もうひとつが、脱炭素世界における世界的権威が並ぶサステナブル・アドバイザリーボードの存在だ。そのなかには、日本の脱炭素化をけん引した元環境省事務次官の中井徳太郎の名前も見える。「彼らのおかげで数年先まで見据えて、逆算的にどういう需要が生まれるのかがわかります。それが強みであり、私が、この会社に投資しようと思った理由でもあります」と塚本はいう。

そう、もともと塚本はパーセフォニに投資家として関わっていた。新卒で三井物産に入ってインターネットの黎明期を体感してから、ITの世界へと移り、自身も手ぶらで出張できるサービスを行うダフル.インクを創業するなど、IT社会の成長とともに歩んできた。

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パーセフォニと出会ったのも、アマゾンの広告メディア統括していたバイスプレジデントの頃。たまたまダフル時代の人脈からパーセフォニの相談に乗って欲しいと依頼されたことがきっかけで、カワモリと話し、この会社に惚れ込んだのだ。

塚本は「インターネットの黎明期と同じ、新しく、巨大な経済圏がまわっていく感覚を覚えた」と、この時のことを振り返る。2021年にカワモリに会い、個人としての投資を決め、2023年中旬にAmazonを退社してパーセフォニに正式にジョインした。

それから3年近く経つが、今もその高いポテンシャルを感じるという塚本。

「当初は、炭素会計についてこちらから企業に導入を呼びかけていたが、今は、むしろ企業から相談に来ていただけています。この1年で大きく関心が高まったと思います」。

先日も、ガバナンス、リスク、コンプライアンスいわゆるGRCの世界的企業であるディリジェント社の炭素会計部門を買収。「我々にとっては初めてのM&Aでしたが、これによってかなりのお客さまがパーセフォニに移行していただき、ディリジェント社も我々に資本参加するなど確実に影響力を増している」と、塚本は成長のさらなる手応えを感じている。

とはいえ日本は、企業や業界によって取り組みに差があると塚本は捉えている。例えば、自動車業界は従来から調達基準に排出量の算定が組み込まれており、最近では放送業界が出稿先の意向で劇的に変わっているが、受け身の業界もまだまだ多いというのだ。

「地球上で経済活動を行う以上、脱炭素化は責務であり、同時にチャンスです。優れたサプライヤーを見つける基準にもなりますし、米国のある調査では、Z世代が入社を決めるポイントに在宅勤務とESGへの取り組みの2つを挙げていて、人材獲得にもつながる話です。電気やガス、水道と同じように当たり前なものになったのですから炭素会計を上手く活用して、成長につなげていただきたいですね」

炭素会計をどう捉えるか、それが地球の未来にも、企業の未来にも深くかかわっている。

文=古賀寛明 写真=後藤秀二

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