東京建物が手がけた「Brillia Tower 堂島」とアートマーケットの関係とは

Brillia Tower 堂島(Nacása & Partners Inc.)

「国際級ホテルと住宅の複合開発は国内での前例がほとんどなく、それらの開発事例を学ぶために当時の担当がニューヨークやマイアミを視察した際、アートが街中の至るところで身近に、そしてごく自然に息づいていることを実感したそうです。それにヒントを得て、アートの街である堂島・中之島を発展させていきたい、そこに暮らす人の日常にもアートという非日常の良い刺激を与えていきたいという想いが生まれ、アートをこの開発のキーに据えました」と和田。

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(⾦⽒徹平《Teenage Fan Club》撮影 市川靖史)
(⾦⽒徹平《Teenage Fan Club》撮影 市川靖史)

実際の作家や作品の選定においては、森美術館館長も務めたキュレーター/美術評論家でエヌ・アンド・エー代表の南條史生が監修。物件の引渡しとともに、所有は東京建物から入居者(管理組合)へと移っているが、マンション開発における企業のアート購入としては類を見ないクオリティの高さと規模だ。

作品はコミッションも多い。「空間特性や生活動線、その空間での時間の過ごされ方をイメージしてどんなアートを配するのがよいだろうかとプロジェクトチームで検討を重ねましたが、実際にできあがるまでどんな作品になるのかわからないので、空間や他のアートとどう融合させていくか想像するのが難しくもあり、面白い部分でもありました」と和田は振り返る。

ブランド価値や認知向上に確かな手応え

東京建物では、Brillia Tower 堂島以前からもまちづくりにアートを取り入れてきた。不動産デベロッパーとしてそれ自体は珍しいいことではないが、2021年後半、同社は「ブランド差別化の一環として本格的に注力」し始める。東京・京橋の自社ビルを利活用する際、思い切って1階に展示空間「BAG-Brillia Art Gallery-(バッグ ブリリアアートギャラリー)」をつくり、アート活動の発信拠点としたのだ(再開発に伴い25年10月に閉館)。

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「ブランドの価値向上の取り組みとしてはじめたアート発信拠点の開設はブランド戦略の中で大きなターニングポイントとなった」と、東京建物 住宅事業企画部マーケティンググループ課長の中山佳彦は振り返る。

そのブランド戦略の成果はさまざまな形で現れてきている。例えば、年1回の認知度調査では「Brilliaの魅力を感じた点は」という問いに対し、「アート関連の取り組み」が、テレビCMやモデルルーム見学、インターネット広告に次いで第4位に浮上。また、入居者の会員組織向けのアンケートにおいても、アート関連イベントへの興味・関心が高いという。

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文=橋長初代 人物写真=井上陽子 編集=鈴木奈央

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