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2025.12.15 14:00

欧州の著名インフルエンサーに「詐欺疑惑」、130億円のファッション帝国が崩壊

インフルエンサーのキアラ・フェラーニ(Photo by Daniel Perez/Getty Images)

インフルエンサーのキアラ・フェラーニ(Photo by Daniel Perez/Getty Images)

著名インフルエンサーのキアラ・フェラーニはかつて、「イタリアのキム・カーダシアン」と呼ばれていた。しかし、詐欺容疑をめぐる裁判に直面する彼女は、マーサ・スチュワートのような転落の道をたどる可能性がある。

詐欺容疑で裁判に出廷したフェラーニ、かつての華やかな姿から一変

ファッション系インフルエンサーのキアラ・フェラーニは11月、ミラノの裁判所に出廷した。彼女はその日、白いシャツに控えめなダブルブレストのスーツを身にまとい、蛍光灯に照らされた廊下を歩いた。10年以上にわたり彼女を追い続けてきたパパラッチに取り囲まれる中、かつてのトレードマークだったウインクは見せず、ぎこちない笑顔を浮かべていた。フェラーニは「私は人生の中でも特に厳しい時期を迎えている」と記者団に語り、「来てくれてありがとう。前に進んでいる」と語った。

この姿は、インスタグラムの2800万人のフォロワーが見慣れてきた、華やかな38歳のイタリア人クリエイターのイメージとは大きく異なるものだった。フェラーニは2015年にフォーブスの「30 Under 30」に選ばれ、2017年には「世界で最も影響力のあるインフルエンサー」にも選出された。だがその日の舞台は、メットガラのレッドカーペットでも、パリ・ファッションウィークの会場でもなかった。彼女は被告人として法廷に向かう姿をさらした。

来月、フェラーニは再び同じ裁判所に出廷し、判決の言い渡しを受ける。検察は、フェラーニが2022年、製菓会社バロッコと組んで行ったチャリティーをうたう販促企画で、消費者を欺いたと主張している。この企画で彼女は、自身のブランド名を冠したパンドーロ(イタリアのクリスマスケーキ)を販売し、売上の一部が寄付されるかのような印象を与えたとされる。起訴内容には、2021年と2022年に彼女が宣伝したイースターエッグをめぐる、同様の案件も含まれている。検察当局は、フェラーニが自身のソーシャルメディアでの影響力を利用し、「ピンク・クリスマス」と名付けられたパンドーロの売上の一部が、希少な小児がんを専門とするトリノの小児病院の支援に充てられるかのような印象を与える、誤解を招く情報を発信したと主張している。

「パンドーロゲート」――寄付と売上は無関係とされ、検察当局は不正な利益に対し懲役刑を求刑

しかし実際には、製菓会社バロッコはキャンペーン開始前に約5万4000ドル(約837万円。1ドル=155円換算)を同病院に1度寄付したのみで、パンドーロの売上とこの寄付は無関係だったとされる。このコラボレーションによってフェラーニが所有する2社には少なくとも110万ドル(約1億7000万円)が支払われており、これが「不正な利益」に当たると検察は述べている。

フェラーニはすでに、罰金や和解金などとして270万ドル(約4億2000万円)を支払っているが、検察はこれに加えて懲役20カ月を求刑している。フェラーニ本人は無実を主張しており、迅速な裁判を選択した。弁護団もこの案件には刑事責任を問うだけの要素はないと訴えている。

ただし、「パンドーロゲート」と呼ばれるこの騒動による打撃の大半は、すでに現実のものとなっている。フェラーニの名前を使ったファッション事業を展開する「キアラ・フェラーニ・ブランド(法的名称はフェニーチェ。イタリア語で“不死鳥”を意味する)」と、インフルエンサーとしての活動を管理するために設立したTBSクルーの両社は、10年以上にわたる急成長の末、今や数百万ドル規模の損失を抱える状況だ。

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翻訳=上田裕資

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