1. 共感における1%の変化
この変化は、思い込むのではなく、相手の視点になって考えることを促すものだ。共感とは、決して壮大な感情表現ではないし、そうなり得るものでもない。それは実際には、反応する前に「相手は何を感じているのだろう」と考えようとする、謙虚な姿勢に近いのだ。
共感を育むためには、その人間関係が安全であり、かつ、相手から何かと偏った評価や判断をされないと感じられるような人間関係であることが必要だ。そして、共感は、繰り返しの実践によってごく小さな単位で成長する。2万4000人以上の参加者を分析した大規模なメタ分析では、より安定した愛着を持つ人ほど一貫して共感性が高く、逆に、回避的な愛着は低い共感性を示すことがわかった。
すでにあなたとパートナーとの人間関係が安全なものであるなら、そこに共感をもう一層加えても害はない。また、もし自分やパートナーに不安定な愛着傾向があると感じているなら、共感を1%増やすことが、最も抵抗の少ない改善策になる可能性がある。具体的には、次のような方法がある。
・「何が原因で、パートナーは今日あのような反応を示したのだろう」と自問する
・即断するのではなく、簡単な確認をする
・自分の主張をする前に、相手が感じたことを認める一文を添える
2. 忍耐における1%の変化
行動の観点から見ると、「忍耐」は実践的で訓練可能なスキルである。それは、より良い反応をするために、短時間の感情的不快感に耐える能力だ。そして、ほんのわずかな忍耐でさえ意味を持つ。
忍耐を1%高めるとは、表面的には驚くほど小さなことに見えるかもしれない。
・相手の話を遮る前に、一度だけ呼吸する
・防御的に返答する前に、10秒間待つ
・双方が落ち着くまで、難しい会話を先延ばしにする
このように短い間を置くことで、脳が自動的に反応するのを避け、代わりに脳が自分の反応に意図的な調整を加えるための時間を稼ぐことができるため、人間関係に大きな効果をもたらす。
研究によれば、意図的に一呼吸する、反射的な反応を中断するといった、ごく短いマインドフルな注意の瞬間であっても、トップダウンおよびボトムアップ両方の感情調整システムが活性化される。これにより、推論したり相手の視点になって考えたりするときに働く前頭前野が活性化し、扁桃体による反応が抑制される。一見取るに足らない行為が、不釣り合いなほど大きな効果を持つのはそのためであり、脳が衝動よりもつながりを選ぶのに十分な時間を確保できる。
これらの数秒間のミクロな自己調整を繰り返すことで、対立パターンは崩れ、不必要な感情の高ぶりは減少し、たとえ感情が高ぶる場面であっても、一歩踏みとどまる力が強化される。


