イランは最後のシャー(王)、モハンマド・レザー・パフラビーの統治下で米国の親密な同盟国だった時代、米国製の先進的な軍事ハードウェアを大量に購入していた。イラン空軍は「マクドネル・ダグラスF-4ファントムII」、「ノースロップF-5タイガー」、さらには「グラマンF-14Aトムキャット」といった米国製戦闘機を多数運用していた。とりわけ代表的な第4世代戦闘機であるF-14Aに関しては、米空軍以外で運用する唯一の空軍だった。地上でも、イラン陸軍が戦車「M60パットン」や対戦車ミサイル「BGM-71TOW(トウ)」などの米国製兵器を運用していた。
1979年の革命でパフラビーが追放され、テヘランの米国大使館が占拠されて米国の外交官らが人質に取られると、米国はイランに対して武器禁輸措置を科した。これは現在にいたるまで続いている。例外は1980年代のいわゆる「イラン・コントラ事件」であり、悪名高いこの事件ではTOWミサイルを含む米国製兵器がイスラエル経由で秘密裏にイランへ送られた。武器を売ってくれる国がほとんどなかったイランは、1980年から1988年までサダム・フセイン政権のイラクと繰り広げた消耗戦で創意工夫を強いられた。大きな損害を出したこの戦争の終盤には、イランはすでにTOWの自国版「トゥーファン(ペルシャ語で「暴風」)を生産していた。
時代を下り2022年以降の報道によると、ロシアはイランからシャヘド(技術移転を含む)の供給を受ける見返りの一部として、TOWよりも高性能な米国製対戦車ミサイル「FGM-148ジャベリン」をリバースエンジニアリングのためイランに提供したとされる。米国や同盟国の兵士や装甲車両はいつの日か、危険なジャベリンのイラン版と遭遇するかもしれない。
イスラエルはかねて、ウクライナへの兵器供与をいっさい拒否していることについて、供与すればその兵器がいずれイランの手に渡り、自国に対して使われるおそれがあるという理由で正当化してきた。こうした主張は根拠のないものではない。トゥーファンと同様、イランはイスラエル製の対戦車ミサイル「スパイクMR」をリバースエンジニアリングし、「アルマス」と呼ばれる高性能ミサイルシリーズを開発した「実績」があるからだ。コピーしたスパイクMRは、2006年のレバノン戦争中、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが国内で鹵獲し、後ろ盾のイランに渡したものだった。
最近では、イランメディアが12月6日、ヒズボラが直近の紛争中にイスラエル軍から投下された米国製の小直径爆弾(SDB)「GBU-39B」の無傷の実物の画像と部品を、イランに提供したと報じている。米国は数日前、未爆のこの爆弾がイランはもちろん、ロシアや中国といったライバル国の手に渡ることを懸念し、レバノンに返還を求めていた。

