多くのリーダーが大胆さに憧れながらも、その意味を完全に理解している者は少ない。虚勢や衝動性、あるいは起業家的な威勢と混同されることが多い。だが絶え間ない混乱と不確実性が支配する現代において、大胆さは個人の鍛錬であると同時に戦略的な必要条件となっている。これを極めたリーダーは不確実性に単に耐えるだけでなく、それを乗り越えて行動することを学ぶ。
ビジネスにおける大胆さ──恐怖に直面しても断固とした行動を取ること
だからこそ、米ハーバード・ビジネス・スクールのランジェイ・グラティ教授の研究は今日、強く共感を呼んでいるのだ。新著『How to Be Bold: The Surprising Science of Everyday Courage』でグラティはリーダーが身動きが取れなくなる原因と、状況が不透明で恐怖が現実的なものであっても確信を持って前進できるようにする要素を探求している。
筆者がビジネスにおける大胆さの定義を尋ねると、グラティは躊躇することなくこう語った。「私にとって大胆さとは、恐怖に直面しても断固とした行動を取ることだ。例えば『ハーバード・ビジネス・レビュー』に2010年に掲載された記事で、私は不況時に成長のために投資する企業の割合を分析した。その数字はわずか9%で、そうした企業は不況を脱すると以前よりも強くなっていた。こうしたことから記事のタイトルは『Roaring Out of Recessions(不況から勢いよく復活する)』だった」。
大胆であることは、無謀であることと異なる
しかし大胆であることは無謀であることではない。グラティは明確にするために古代の知恵に言及する。「古代ギリシャの哲学者アリストテレスも区別した。大胆さは慎重で思慮深く、熟慮されたものでありながら、それでも断固としている。無謀さは自分や他人に及ぼす影響を顧みずに無分別に行動することだ」。
多くのリーダーは、リスクではなく「不確実性」に直面し二の足を踏んでいる
大胆さが慎重で思慮深いものなら、なぜ多くのリーダーは勇敢に行動することに二の足を踏むのだろうか。グラティは誤解されがちな原因を指摘する。「今日私たちが直面している『不確実性(リスクではない)』が動けなくしているのだと思う。麻痺させ、恐怖で身動きが取れないようにする。恐怖に向き合って対処して初めて突破口が開ける」。
突破には内面の再構築が不可欠
その突破には内面の再構築が不可欠だ。グラティが指南する戦略はまず、自分に語りかける物語(ナラティブ)を作り直すというものだ。「自分に言い聞かせるナラティブを変えれば、自分や周囲に対する見方も変わる。否定的なナラティブに縛られる人もいれば、世界や自分への見方を形作る肯定的で積極的なナラティブを作り出し、大胆な行動へと駆り立てられる人もいる」。
そうしたナラティブは自己認識に大きく依存する。グラティは「ほとんどの人にとってこれが鍵だ。ごく稀に無意識に大胆さの原則を取り込んでいる人もいる。だが大半の人にとっては旅のようなもので、練習と努力で徐々に鍛え上げる筋肉のようなものだ」と言う。



