体重の減少とそれがもたらす人生の劇的な変化で大きな話題となったGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は、医療とポップカルチャーという異なる分野の双方に多大な影響を及ぼしている。だが、その一方では「副作用」も報告されている。
それは、医療機関でもインターネット上で情報を交換する人たちの間でも注目されている「脱毛」だ。「オゼンピック(Ozempic)」や「ウゴービ(Wegovy)」「マンジャロ(Mounjaro)」などを使用した人たちの多くが、ウエストラインが細くなっていくのと同時に、髪が薄くなっていったことを報告しているという。
そのため、これらの「奇跡の注射剤」には、使用した人たちの虚栄心を打ち砕く「罠」があるのではないかとの懸念が広がっている。だが、体重と毛量の減少の間には、実際に直接的な関連性があるのだろうか? あるいは、そうした影響が出るのは、極端にやせた場合、栄養が不足した場合に限られるのだろうか?
GLP-1とは?
GLP-1薬はもともと、2型糖尿病の治療のために開発されたものだ。小腸から分泌されるホルモンのように働き、食欲を抑える働きがあるほか、血糖値を低下させる。そのため、体重管理に気を遣う富裕層やエリート層の「お気に入り」の薬となっている。
米国では2025年前半の時点で、同様の薬が11種類以上、販売されており、40種類以上が開発段階にある。これらの薬がおよぼす影響は、極めて大きなものになると予想されている。
これらの薬は、使用すれば1年で体重を15~20%(その人のBMI:ボディマス指数によって差は出るが、1週間でおよそ450~910グラム)減らすことができるとされている。代謝の健康も劇的に改善され、外見も大きく変わることになる。
こうした効果は、GLP-1薬の市場の成長に反映されている。世界全体のGLP-1薬の市場規模は、約628億6000万ドル(約9兆7900億円)。肥満治療と心血管系へのメリットが報告されていることや、神経保護作用もあると指摘されていることから、2034年までのCAGR(年平均成長率)は17.5%と予想されている。
ブロックバスター(大型新薬)のひとつ、「ウゴービ」の売上高は2025年第3四半期、供給面での問題や価格圧力の影響を受けながらも、米国市場だけで前年比18%増の約31億ドル(約4830億円)に達したとされている。
いずれにしても、四半期あたりの処方箋の発行数が数百万にのぼり、さらに使用者数が急増する中、GLP-1薬の添付文書に記載される脱毛その他の「副作用」に関する説明には、精査が必要だろう。



