宇宙

2025.12.15 14:00

太陽系外の湿った溶岩球惑星に「大気」、史上最有力の観測的証拠 NASA

高温の「スーパーアース」太陽系外岩石惑星TOI-561 bを描いた想像図。NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データは、TOI-561 bに広大なマグマの海を取り巻く分厚い大気が存在することを示唆している(NASA, ESA, CSA, Ralf Crawford (STScI))

岩石質の太陽系外惑星に大気が存在する可能性があることを示す、これまでで最も有力な証拠が、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた観測で発見された。

太陽系から約280光年の距離にあるこの系外惑星TOI-561 bは、地球とは環境が大きく異なり、溶岩の海(マグマオーシャン)に覆われた惑星を、ガスの分厚い層が取り巻いているように見える。TOI-561 bは小型で非常に高温なので、大気を保持できないとこれまでは考えられていた。中心星(主星)からの強烈な放射を受けて大気を剥ぎ取られてしまうと予想されるからだ。

驚くべき発見

今回の研究をまとめた論文の第二執筆者で、米カーネギー研究所博士研究員のニコル・ウォラックは「今回の観測結果は、比較的濃いガスが惑星全体を取り巻いていることを示唆しており、超短周期惑星に関する従来の見方を覆すものだ」と述べている。論文は天文学誌The Astrophysical Journal Lettersに11日付で掲載された。今回の驚くべき観測結果は、JWSTでTOI-561 bの表面温度を測定したデータに基づくものだ。TOI-561 bは主星の非常に近くを公転しているため、公転周期がわずか11時間で、潮汐ロックの状態にあるはずだ。

濃い大気の存在を示唆

JWSTの近赤外線分光器NIRSpecを用いて、近赤外波長域での光度に基づくTOI-561 bの昼側の温度を測定することにより、大気を持たない岩石惑星のモデルから予測されるよりも低い温度になっていることを、研究チームは発見した。この温度の低下は、赤外線を吸収したりエネルギーを再分配したりが可能な、揮発性物質に富む大気の存在を強く示唆している。

中心星(左)の近くをわずか約11時間で公転する高温のスーパーアース系外惑星TOI-561 bを描いた想像図。NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データは、TOI-561 bの広大なマグマオーシャンを分厚い大気が取り巻いていることを示唆している(NASA, ESA, CSA, Ralf Crawford (STScI))
中心星(左)の近くをわずか約11時間で公転する高温のスーパーアース系外惑星TOI-561 bを描いた想像図。NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データは、TOI-561 bの広大なマグマオーシャンを分厚い大気が取り巻いていることを示唆している(NASA, ESA, CSA, Ralf Crawford (STScI))

論文共同執筆者の英バーミンガム大学のアンジャリ・ピエットは「水蒸気のようなガスは大気中を通り抜けるまでに、表面から放射される近赤外波長域の光の一部を吸収する」と説明している。今回の論文では、マグマオーシャンと大気との間に動的な交換過程が存在するとする説を提唱している。宇宙空間に流出するガスがある一方、惑星内部から継続的に補充されるガスもあることで、長期的に持続する平衡状態がこの「湿った溶岩球」上で形成されているというのだ。

太古の惑星

TOI-561 bがニュースになるのは今回が初めてではない。直径が地球の約1.45倍、質量が約3倍の「スーパーアース」であるTOI-561 bは、その密度から非常に古い(宇宙の比較的初期に形成された)ことが示唆されている。2021年の研究では、TOI-561 bが天の川銀河(銀河系)の黎明期頃から存在している可能性があることが明らかになった。これは宇宙が少なくとも100億年にわたって岩石惑星を形成していることを示している可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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