高い商品ばかりが英・大学の売店に並んでいた理由
実際、日本とサステナビリティ先進国には、大きなリテラシーと意識の格差が存在する。それを痛感した英国留学時代の経験を紹介したい。 私は2009年から2010年にかけてロンドンにある大学院に留学していたが、構内には当時よく利用していた売店があった。店内には食品や文具が並んでいたが、明らかに日本の大学とは違う点があった。それは、サステナブルな商品しか売られていなかったことだ。
サステナブルな商品は、概して値段が高い。例えばその売店で販売されていたチョコレートはフェアトレードによるもので、スーパーマーケットで売られている通常のチョコレートの2倍以上の値札が貼られていた。構内を一歩出れば安価な商品があるにもかかわらず、学生が当たり前のようにそこでチョコレートを購入する様子を目の当たりにした時には、驚いたものである。
さらに、英国ではテレビのニュース番組で、気候変動に関する情報、例えば国際会議などの話題が日本より頻繁に取り上げられていた。そこにはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のレポートを書いている世界屈指の研究者がコメンテーターを務めていて、日本のメディアの姿勢とは明らかに異なっていた。
また、私は留学先で環境やサステナビリティを専攻していたのだが、同じ専攻の院生が150人近くいる中で、その大半が英国をはじめ欧州や北米出身の社会人経験をもつビジネスパーソンで占められていた。彼らは、ビジネス推進のためにサステナビリティを学びに来ていたので意欲的で、視点や求める成果が学部上がりの多い日本の大学院生よりかなり実務的だったことが、よく印象に残っている。
多くの企業がサステナビリティの領域に投資しているが、それを単なるコストに終わらせず、中長期的な成長につなげるためには、ビジネスリーダー層が適切なサステナビリティに関するリテラシーを身につける必要がある。それが不足していることこそが今、私たち日本企業が抱える問題の本質的な要因だと言えるだろう。
※1 出典:IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)評価報告書
※2 出典:国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ」
※3 出典:IEA国際エネルギー機関発表のデータをもとに著者が算出
※4 出典:UN The Sustainable Development Goals
※5 出典: PwC Japan「コーポレートサステナビリティ調査2022」


