生物多様性センター(CBD)、米国鳥類保護協会(ABC)といった自然保護団体やテキサス州の先住民カリゾ・コメクルドの人々らは、スペースXの超大型ロケット「スターシップ」の打ち上げが失敗し爆発した際に発生した騒音・熱・破片による環境への影響を適切に評価していなかったとして、2023年に連邦航空局(FAA)を提訴した。この訴訟は今年9月、連邦地裁において棄却された。FAAが野生生物に対する打ち上げの影響を適切に調査しなかった証拠はないというのが判事の判断だった。
フロリダ州の地方局25 News KXXVは今年4月、スペースXのロケット打ち上げに伴う騒音の増大を訴える発射場周辺住民の声を特集。番組の中で、ある住民は「この1年で本当にうるさくなった。実際、この半年間は特にひどい」「今がこれまでで最悪だ」と語った。
米ブリガムヤング大学の物理学者ケント・ジーはCNNに対し昨年、ソニックブームは「数フィート(数十センチ)しか離れていない場所で防音装備もないまま銃の発砲音を聞くようなもの」と説明。さらなる研究が必要だとしつつ、建物などにリスクが及ぶ可能性についても言及した。
ソニックブームの騒音、マスクは一蹴
スペースXは自社サイトに掲載した免責事項で、再利用可能なロケットが地球に帰還する際にはソニックブームが発生することを認め、降下するロケットは「超音速から減速するため、帰還地点周辺でソニックブームが聞こえる」と説明している。さらに、ソニックブームの影響は通常「瞬間的な騒音」のみであり、ファルコンロケットは一般的に「複数のソニックブーム」を発生させ、それは「地上では二重の雷鳴として聞こえる」としている。
マスクはかねてX上で、ロケット打ち上げ時のソニックブームに関する懸念を軽く扱ってきた。昨年の投稿では、テキサス州の発射場は「スターシップの打ち上げよりはるかに深刻な暴風雨やハリケーンに見舞われている」と主張し、ソニックブームが建造物の損壊を引き起こすリスクを指摘した米紙ニューヨーク・タイムズの報道を一蹴している。
スペースXの打ち上げ騒音は悪化しているのか
スペースXはロケットの打ち上げ回数を増やしているだけでなく、開発するロケットの発射音そのものも増大している。2025年に入ってから、スペースXはカリフォルニアとフロリダの発射基地からファルコン9ロケットで160回の打ち上げを行った。これは2024年のファルコンの年間ミッション回数より20回以上多い。また、現在も試験中でこれまでに11回打ち上げられているスターシップは「おそらく史上最も騒音の大きいロケットだ」とニューヨーク・タイムズは5月に報じている。


