現場主義と「努力に限界はない」哲学
シーベの経営哲学は、20年近いメルセデスでのキャリアから生まれた。経済学を学んで入社した彼は、エンジニアリング、会計、マーケティング、セールスとあらゆる部門を経験。ルクセンブルクの現地法人は社長兼CEOをつとめた。
「営業時間後、オフィスから下りてショールームに行くと、まだセールススタッフが書類整理をしていた。私は彼らの隣に座って『システムはどう?改善点は?』と聞いて回りました。全身で飛び込んで状況を理解する。これが役に立つんです」
この現場主義は、採用にも表れる。
「採用の際、私が見るのは90%がモチベーションとパッションです。そういった人は学ぶ姿勢もあるし、もっとプッシュしてみようという意識がある。ですから、私はチーム運営でもあえて高い目標を設定します。無理かもしれない目標に対して、どこまで近づけるか。その努力を見たい。安全に達成できる低い目標では評価しません」
この姿勢の背景には、メルセデス・ベンツたたき上げであるシーベ自身の若い頃の原体験がある。
「企業の支援を受けながら学び、働くという道を選びました。そこで結果を出すために、若いころから大胆なゴールを設定して頑張ることが身についていました」
12月、シーベは本社取締役として生産・サプライチェーンを統括する。
電動化という大転換期。AMGは「エレクトリックV8」という一見矛盾した概念で、新時代のラグジュアリーを定義しようとしている。「特別な体験」を追求し続けるブランドの誇りだ。現状に満足しない企業DNAと、努力に限界を設けないリーダーシップ。この組み合わせが、AMGの次章を切り開く。
メルセデス・ベンツ日本
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ミヒャエル・シーベ◎メルセデス・ベンツ本社取締役(2025年12月就任、生産・品質・サプライチェーン担当)。2004年入社。戦略企画、財務、営業等を歴任。ルクセンブルクCEO、会長アシスタント長を経て、2023年よりメルセデスAMG CEO兼トップエンド統括を務めた。


