経済

2025.12.12 14:00

スズ価格が37%上昇 背景にインドネシアの鉱山閉鎖やミャンマー内戦

コンピューターの回路基板をスズはんだで修理する技術者(Mike Kemp/In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images)

コンピューターの回路基板をスズはんだで修理する技術者(Mike Kemp/In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images)

ほぼ忘れられていた重要金属であるスズが、今週、銀が切り開いた記録更新の道をたどり、1トンあたり5万ドル(約785万円)という史上最高値に向けて上昇している。

初めて1オンスあたり60ドル(約9420円)以上で取引されている銀と同様に、スズの価格上昇の原動力は、あらゆるものの電動化による強い需要と供給不足の組み合わせだ。

宝飾品での使用で最もよく知られる銀は、どの金属よりも優れた電気伝導性を持つことから新たな市場を見出している一方、スズは高い伝導性に加え、低い融点を持ち、回路基板のはんだ付けに理想的な金属となっている。

電子機器の「接着剤」とも称されるスズは、投資対象としても供給不足という魅力があり、入手可能な供給の多くはミャンマー、中国、インドネシアといった高リスク国からもたらされている。

ミャンマーでくすぶる内戦が、同国からの供給を制限している。中国は広大な製造業セクターで生産できるものをすべて使用しており、一方、インドネシアの生産は政府による違法採掘の取り締まりの影響を受けている。

1000カ所の違法スズ鉱山が閉鎖

インドネシア政府は今年、1000カ所以上の小規模な違法スズ鉱山を閉鎖した。これは税収の損失だけでなく、河川や湖からスズを採掘する鉱山労働者による環境被害も懸念してのことだ。

河岸の浸食は、最近、推定900人が死亡した国内の一部地域で発生した大洪水の一因とされている。

環境要因は、ニッケルにとっても問題となっている。ニッケルもインドネシアで非常に大量に生産されているため、他国は鉱山を閉鎖せざるを得なくなっている。

年初からスズの価格は37%上昇して3万9884ドル(約626万円)/トンとなり、過去4週間だけでも10.7%上昇している。

最新の価格は、フィッチ・ソリューションズの調査サービス部門であるBMIのアナリストが予測した来年の予測、3万5000ドル(約550万円)/トンをすでに上回り、投資銀行シティが先月予測した4万ドル(約628万円)/トンに近づいている。

シティの予測では、この価格に達する確率は60%とされ、より興味深い5万ドル(約785万円)/トンという価格の達成確率は20%とされていた。

スズの強気相場が形成中

スズの需要を支える急速な電動化と不安定な供給の組み合わせにより、シティのスズに対する強気相場シナリオが、投資家の予想よりも早く注目を集める可能性がある。

需要が大幅に増加し、供給が逼迫したままであれば、2022年初頭のロシアのウクライナ侵攻直後に達した4万7800ドル(約750万円)/トンという記録価格は、今年中には破られる可能性がある。

forbes.com 原文

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