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2025.12.14 12:00

なぜ自尊心は人生の基礎なのか?大きな成功より「小さな約束」を重視すべき理由

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自尊心は順境では揺るぎなく、逆境では寄り添う

自尊心は何かを達成したときだけでなく、物事がうまくいかない時に自分をどう扱うかにも関わる。そうしたときに影響するのが、セルフコンパッション(自分への慈しみ)だ。これは自分の欠点に対して優しく接し、非難せず受け入れることだ。

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専門誌『Psychology Research and Behavior Management』に2023年に掲載された大規模なメタ分析で、セルフコンパッションと自己肯定感の間に強い相関関係があることが示された。さらに重要なのは、セルフコンパッションが心理的ウェルビーイングを高め、不安やうつを軽減し、回復力を育むことを示した点だ。

日常生活において、休息や穏やかな自己対話といった小さな気遣いを自分に約束し、それを実行することで、自己効力感だけでなく自分への労りも強化される。この二重の強化が、外部の評価に依存しない、安定的で健全な自己価値感の形成を助ける。

つまり、自尊心とは厳しくある、あるいは情け容赦ないことではない。それは、自分に確実に優しくあり、自らの本質的な価値を反映する一貫した小さな行動を取ることだ。

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自尊心は「大きな成功」に基づかない

多くの人が陥る罠は、大きな成功や昇進、重要な功績といった「大きな意味を持つ」瞬間を待って、自分が尊重に値することを示すというものだ。だが最近の研究で、このアプローチは特に完璧主義や自己批判の傾向がある人にとっては、逆効果になる可能性があることが示されている。

専門誌『BMC Psychology』に2023年に掲載された大学生を対象とした研究では、「自己批判的な完璧主義」が自己肯定感と生活の満足度を媒介していることがわかった。自己批判が強い学生は、たとえ自己肯定感が高くても生活の満足度は低かった。

これは、非常に高い基準で自身の価値を測り、大きな成功を収めた後だけ自分の価値を感じると、脆い自己価値が築かれることを示唆している。つまり、ごく普通あるいは避けようのない失敗や挫折で、自己価値が崩れ去ることがあることを意味する。

しかし、たとえ不完全でも小さく継続的な行動に基づく自尊心には回復力がある。自分の価値は完璧さに左右されないことを学ぶ。自分の価値は誠実さや一貫性、自己尊重に根ざしている。

やがて内面の基盤は安定する。というのも外部の評価や過酷な基準ではなく自己信頼や自分への労り、そして確かな信頼性の上に築かれているためだ。

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翻訳=溝口慈子

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