米国のドナルド・トランプ大統領が新年に取り組むべき大きな安全保障上の問題は、ウクライナ侵攻だろう。
ウクライナは戦死者と兵役逃れが増えていることから、人的資源の不足に苦しんでいる。「無人機(ドローン)による塹壕(ざんごう)戦」とも呼ばれる、気力を削ぐような単調な戦闘では、兵士の士気を維持するのも難しい。ウクライナ国内の汚職問題も事態を悪化させている。ロシア軍の無人機技術が劇的に向上し、同軍がわずかな前進のために訓練もまともに受けていない部隊を死の危険を伴う攻撃に投入する意欲があることを考えると、ウクライナ軍の戦場での功績は驚くべきものだ。同軍の武器の即興的な応用と革新性も驚異的だ。
だが、ウクライナにはさらに多くの地上兵器と空中兵器、そして十分な量の弾薬が必要だ。米政府は時折、同国に対して励ましの言葉をかけているものの、依然としてウクライナがロシア国内の重要施設を徹底的に攻撃することを望んでいないという印象を与えている。
ウクライナ軍は依然としてロシア軍を押し戻し、ウラジーミル・プーチン大統領の勝利の夢を打ち砕くことができる。しかし、そのためには十分な量の武器が必要だ。
間違いなく、プーチン大統領のロシア帝国の復活という夢は今もなお燃え続けている。だからこそ同大統領は、1940年にソビエト連邦の指導者ヨシフ・スターリンが占領し、1991年のソ連崩壊とともに再び独立したリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国に対し、サイバー攻撃や軍事演習、領空侵犯といった形で圧力をかけているのだ。プーチン大統領はまた、ポーランドをはじめとする中東欧諸国を再びロシアの衛星国にしようとする自身の野望を隠そうとしていない。これらの国々もロシアの挑発にさらされている。
トランプ大統領は、この根本的な脅威から手を引くことはできない。同大統領は無条件でウクライナを支援すべきだ。同国の運命は、欧州の安全保障のみならず、中国が自らの帝国的野望を追求する手段やトランプ大統領の歴史上の位置付けにも深い影響を及ぼすだろう。宥和政策は不滅の平和賞をもたらさない。



