『ダウンタウンDX』仕掛け人が語る、「未処理情報」から生み出すヒット企画発想法

テレビプロデューサーの西田二郎氏。出演したラジオ番組のスタジオにて

つまり、西田氏は未処理情報として頭の中に置いておいた『2時のワイドショー』のパーティードレスを着た女優がクルクル回る映像と、スーパーマーケットで見たネギを抱えた庶民的な女性の映像を頭の中でかけわせ、「芸能人がスーパーから普段のファッションで出てきたら、ネギを抱えた女性は見てくれるかな」「芸能人が普段着でクルクルと目の前で回ってくれたら、あの女性は笑ってくれるかな」と発想を膨らませていったのだ。

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成功する経営者は「未処ってる」

同じような経緯で出来上がった企画に、同番組の名物企画「視聴者は見た!」がある。この企画は、視聴者が街で見かけた芸能人の目撃情報を番組で紹介するものだ。「スーパーで見た女性が、例えばスーパーからネギを持って出てくるスターの日常の一場面を見たら、驚いて喜んでくれそう」という、発想から生まれたという。

もちろん前提として、正確性や速報性が求められる報道情報系の番組では、取材やマーケティングからの企画・制作が必要となり、西田氏が長年手掛けてきたバラエティ番組とは大きく異なる。

しかしビジネスに置き換えると、かつてなかった面白さや「視聴者が求めているがまだ形になっていないもの」を見つけ出し、番組の核にすえていくという西田氏のバラエティ番組づくりは、新しいアプローチによってゼロイチで新規事業を立ち上げたい場面や、事業の抜本的な改革が必要な場面などで、試してみる価値がありそうだ。

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一方で、報道情報系の番組づくりは、すでにある情報や事実からその原因や舞台裏を探ってストーリーを膨らませ、いかに分かりやすく説得力をもって伝えるかに主眼を置く。そのため、既存のサービスや商品の強みを再定義し、市場での価値を高めて成長させるプロセスに似ているのかもしれない。

「番組が一つの経済的な生き物であるとするなら、作り手がたくさんの未処理情報を抱えている番組には可能性があります。視聴者から『この番組は結局こうなるんだろうな』と見限られないし、神秘的で伸びしろがある。経営者の方も事業を思いついた時、まだ言語化はできないけれど、頭の中で成功する映像が回っているということがあるでしょう。言葉にできないビジョン、未処理情報をいくつも持っている経営者、リーダーは魅力的だと僕は思う。成功する経営者はきっと『未処(みしょ)ってる』んです」(西田)

西田流「発想力を高める」4ステップ

今回聞いたのは、テレビ業界の中でもバラエティ番組という特殊な分野で培われてきた発想法であり、西田氏独自の感性や能力がベースになっている部分も大きいだろう。しかし、自身をはじめ読者諸氏も実践できそうな発想力を高めるステップを下記にまとめてみた。

1.既存のやり方を捨てる

いつもと同じ方法では、現状を超えるアイディアが生まれてこない可能性がある。まずは発想法を変えてみるところから始める。

2.ゼロ次情報を集める時間を作る

現場に足を運んでターゲットを観察し、ゼロ次情報を集める時間を持つ。現場ではターゲットにあえて話しかけず、その行動や表情、雰囲気などから、ターゲットの現在や過去、未来について類推する。

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