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2025.12.19 08:15

SNS禁止は子どもの命綱を奪う ユニセフが年齢制限に警鐘を鳴らす理由

プレスリリースより

プレスリリースより

子どもたちのソーシャルメディア(SNS)利用に制限をかける動きが各国で出始めている。子どもを有害な情報や犯罪から守るための措置なのだが、ユニセフはこれに警鐘を鳴らした。

ユニセフはSNSを、孤独感や疎外感を抱く子どもたちにとって、学び、他者との交流、遊び、自己表現の手段を提供する「命綱」だと位置づけている。子どもの安全を確保しようという動きは歓迎するものの、禁止にはリスクがともない、逆効果になる可能性もあると指摘している。

規制をかければ、子どもたちは規制の緩いプラットフォームを探して移っていく。また、端末を共有するなど、規制を回避する手段はすぐに見つかってしまい、それが子どもたちをより危険な場所に追いやる結果となる。

規制は、プラットフォームの安全対策を肩代わりするものではなく、またプラットフォームの設計や投稿の管理(モデレーション)を改善する企業の責務を代替する手段であるべきではないとユニセフは警告している。

そこでユニセフは、政府、規制当局、企業に対して、「子どもたちやその家族と連携し、安全で包摂的かつ子どもの権利を尊重するデジタル環境を構築する」よう、以下の提案を行った。

● 年齢に関連する法律や規制が、企業がより安全なプラットフォーム設計や効果的な投稿の管理に投資する義務に取って代わるべきではない。政府は、企業が子どもの権利への悪影響を積極的に特定し、対処する責任を負うよう義務づけるべきである。

● SNSおよびテック企業は、子どもの安全と幸福を中心に見据え、製品やサービスの設計を見直さなければならない。安全なプラットフォーム設計と効果的な投稿管理への投資、権利を尊重する年齢確認ツールの開発、年齢の低いユーザーには発達段階に適した安全な環境を提供するなど、他の年齢層とは異なる体験の提供が求められる。子どもたちを守るためのこれらの措置は、規制や保護措置の実施能力が低い脆弱な国や紛争などの影響を受けている国を含む、あらゆる状況の中で適用されなければならない。

● 規制当局は、子どもがオンラインで被る危害を効果的に防止・軽減するための体系的な措置を講じなければならない。

● 市民社会および関係団体は、ソーシャルメディアの利用年齢制限に関する議論において、子どもや若者、保護者、養育者の声と実体験を強く発信していかなければならない。デジタル時代の中で子どもたちを守る最善の策に関する意思決定は、子どもたち自身から得られた証拠を含む、質の高い証拠に基づくことが必要。

● 保護者や養育者のデジタルリテラシーの向上も支援されるべき。保護者や養育者は、重要な役割を担っているにもかかわらず、オンラインで子どもを守ることに関して、プラットフォームの監視、見えないアルゴリズムの管理、24時間体制での複数のアプリの管理など、不可能な役割を強いられている。

安易な規制は子どもの権利や幸福を奪い、無責任なプラットフォーム運営企業を利することになる。なんでも禁止すればいいという問題ではない。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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