ビルケンシュトックのレガシーを守るのは、このブランドが職人の技に対して持つ強い責任感でもある。ビルケンシュトックのサンダルとクロッグは、何世紀にもわたって受け継がれてきた伝統的な原則に従い、欧州域内にある工場で生産されている。
また、同社の主な強みは、(製造から販売まで工程を社内で担う)垂直統合の戦略にあるという。それは1980年代以降、生産が大幅に海外に移管されてきたこの業界において、ビルケンシュトックに競争力を与えてきた。
ビルケンシュトックは製品の組み立ての90%以上を自社で行い、フットベッドは100%、ドイツ国内に所有する6カ所の工場で生産している。コルク(を使用するその原料の一部)は、ポルトガルで生産している。
ビルケンシュトックのすべてのシューズには、50以上の専門技術が必要となる。それぞれの技術を持つ経験豊富な職人たちの献身が、ビルケンシュトックの基準を保つことと、クラフツマンシップに誠実な生産を確実にしている。機械と自動化が互いに補完し合うそれぞれの工場には、ビルケンシュトックの品質基準を満たすためにカスタムデザインで製造された機械もある。
進化を続けるブランドの「要」
ブランドの要であり続ける「ボストン」は、進化も続けている。(「ボストン」をベースに、特に医療関係者などの)仕事用のシューズとして開発された「トキオスーパーグリップ」は、バックストラップと2層構造のアウトソールを採用。そのほか洗練された「ネープルズ」やコンテンポラリーなデザインの「ロマ」など、新しいスタイルも人気を得ており、馴染みのあるフットベッドとともに、クロッグの世界をさらに拡大している。定番のスタイリッシュなクロッグ、2026年に発売から50周年を迎える「ボストン」は、足の健康を重視するこのブランドにとって不変のスタンダードだ。
バウムはビルケンシュトックのアプローチについて、次のようにまとめている。
「私たちが過剰な宣伝をすることはありません。私たちは価値を高め、独特の何かを開発します。それが新たな素材でも、そのシーズンの流行色でも装飾でも、あるいは外部からクリエイティブなパートナ―を招き、その人たちのビジョンを取り入れることでも、それはブランドのためではありません。高く評価されるのは、こうしたブランドの真正性です」
「ボストン」は、250年にわたって受け継がれてきた遺産の証であり、それが家族すべてのために作られた普遍的なデザイン・アイコンであることの証しだ。
バウムは最後に、「『ボストン』は時代を超えて残るスタイルであり、使用されるなかで個性を増していくもの。そして、永続的なレレバンスの証であります」と締めくくっている。


