一方、足の健康が意外にもファッショナブルなものになり得るという考えを妨げるのは、ビルケンシュトックのコア原則でもあり得ることを証明したのも、こうした他社とのコラボレーションだった。
ビルケンシュトックの名前は250年近くにわたって、「快適さと機能、丸みを帯びたデザインの独特なコンビネーション」と同義だった。シンプルなストラップとアイコニックなシルエットは、何より大切なのは足の健康、自然な歩行を促すことだという革新的な理念に対するこだわりのもとに成り立っている。つまり、「メイド・イン・ジャーマニー」のフットウェア・ブランドにとって、変わることのない本質の起源は、ドイツ語で言う「Naturgewolltes Gehen(「自然な歩行」の意味)」の精神だ。
受け継がれてきた遺産
創業者であり、古くからの教会の記録にも残されている靴職人のヨハネス・ビルケンシュトックは1774年から、その技術で称賛され、「靴づくりの名職人」と呼ばれるようになった。
そして、その後を継いだ子や孫たちはビルケンシュトックの基礎を築き、靴づくりを一変させるような哲学を持って、オーソペディック・シューズにイノベーションを起こしてきた。この原則は、ビルケンシュトックの「システム」として具体化されてきた。それは、自然な歩行のコンセプトを軸に確立された、オーソペディック・シューズをブランドの基本とする方針だ。
創業者のレガシーを受け継ぐ次世代によって成功を収めてきたこのブランドは、フランクフルトに新たな拠点を見つけ、ドイツ国内に靴づくりのハブを作ってきた。そのビルケンシュトックの中核にあるのは、体重を均等に分散させ、圧力を感じる部分を減らし、裸足で地面を歩いているような感覚を持たせるコルク製の曲線を描くフットベッドだ。
「ボストン」モデルのアッパーが持つ普遍的な魅力は、ブランドにとっての誇りだ。バウムはこのモデルが得てきた名声と、それによって進化してきた自社をたたえ、こう述べている。
「私たちにとって『ボストン』は、ニューヨークや上海、パリの街なかで見られても、用事を済ませるためにあちこちを回るときにはいても、ランウェイにデビューしても、あるいはキッチンや手術室で長時間も立ち続ける人の足をサポートするためにも(適切な一足となるかどうかを検証するための)『概念実証』です」
「デザインにおける普遍的なアイコンとして、異なる世代の間をつなぎ、クロッグの世界全体にインスピレーションを与え続けます」
「ビルケンシュトックが原型です。手本とされることもありますが、原型に匹敵するものは現れません」


