2025年10月24日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。
2025年7月に高輪に本社を移転し、「未来への実験場」で便利かつサステナブルな街づくりに挑むKDDI。自前主義にこだわらない「通信×AI」戦略で、さらなる社会性と事業性の循環を目指す。
2025年3月にまちびらきした「TAKANAW A GATEWAY CITY」(高輪ゲートウェイシティ)。最寄り駅に降り立った瞬間、新しい街特有の高揚感に包まれた。オフィスビルの受付フロアではロボットたちが活躍の機会をうかがっていた。商品デリバリーや来客対応、清掃など、それぞれに役割があるという。
7月に高輪ゲートウェイシティに本社を移転したKDDIは、この街を「未来への実験場」と位置づけている。1万3000人いる社員のデータを活用しながら、便利でサステナブルな分散型スマートシティの実現を目指す。
「高輪は、日本で初めて鉄道が海の上を走ったイノベーション発祥の地。社員やパートナー企業の皆さんとともに、新たなステージに向けて進化していきます」
KDDIにとって、25年は新たな一歩を踏み出す節目の年になった。4月に社長CEOに就任した松田浩路は就任挨拶の席で「25年を振り返ったとき、記憶に残る年にしよう」と語りかけた。
その直後、KDDIは同社のサステナビリティ経営を象徴する新サービスをローンチした。日本の通信キャリアで初となる衛星直接通信の商用サービス「au Starlink Direct」だ。米スペースXの衛星通信網「Starlink」とスマートフォンを直接つなげることで、空が見えればどこでもテキストメッセージの送受信や緊急地震速報の受信、位置情報の共有が可能だ。山間部や離島など、地上の通信インフラが届かない地域をカバーし、社会課題のひとつであるデジタル・ディバイド(デジタル格差)や通信格差を解消する。
「auの通信の人口カバー率は99.9%を超えていますが、面積カバー率は約60%です。残り40%を何とかしたいという強い思いで衛星通信を使った方法についてずっと考え、検討を進めてきました」
au Starlink Directの提供開始に伴い、KDDIは月額料金の改定に踏み切った。対象機種なら手続きなしでau Starlink Directなどの新たなサービスを使える代わりに、8月から月額料金を最大で330円(税込み)値上げしている。
「料金改定で得た対価をステークホルダーに還元し、次への投資につなげることで社会性と事業性の循環を実現します」
この循環とイノベーションこそが、KDDIが掲げるサステナビリティの神髄である。



