宇宙

2025.12.13 10:00

地球の磁場、南大西洋上空で「弱化」が進行中 SWARM衛星データで判明

地球の磁場と内部の外核の様子を描いた想像図。地球磁場は盾となり、太陽風の中で地球に向かって飛来する荷電粒子から地球を守っている。この盾がなければ、地球上に生命は存在できない(ESA/Planetary Visions)

地球の磁場と内部の外核の様子を描いた想像図。地球磁場は盾となり、太陽風の中で地球に向かって飛来する荷電粒子から地球を守っている。この盾がなければ、地球上に生命は存在できない(ESA/Planetary Visions)

南大西洋上空に存在する地球の磁場が弱い領域「南大西洋異常帯(SAA)」が2014年以降、欧州大陸の約半分に相当する面積だけ拡大していることが、磁場の測定データ11年分に基づく研究で明らかになった。

地球磁場(地磁気)の強度にばらつきがあることは、19世紀に実施された最初の地磁気調査で判明していた。地磁気が弱い領域の1つは、南米大陸の南東に位置し、大西洋まで広がっている。

SAAは現在、宇宙空間の安全性にとって特に関心の高い領域となっている。この上空を通過する人工衛星が、より強い放射線にさらされるからだ。これにより、誤作動や重要な機器類の損傷、通信途絶などが発生する可能性がある。

欧州宇宙機関(ESA)の地球観測計画FutureEOの下で開発された地球観測衛星の1つであるSWARM(スウォーム)は、同型の衛星3基で構成され、2013年11月より地球磁場の変化の精密な測定を行っている。

SWARMの最近の観測結果に基づく今回の最新研究では、SAAが2014年~2025年の間に徐々に拡大しており、アフリカ南西の大西洋海域では2020年以降、地球磁場がさらに急速に弱化していることが明らかになった。

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、デンマーク工科大学教授(地球電磁学)のクリス・フィンレーは「SAAは、単にひとまとまりの領域ではない」と指摘している。「南米付近と、アフリカに向かって伸びる領域とでは、変化の様子が異なっている。磁場をより激しく弱化させている何らかの特別な現象が、この領域で起きているのだ」

地球の表面の磁場強度分布を示した世界地図。上が2014年、下が2025年のSWARMの観測データに基づく磁場強度分布をそれぞれ示している。南大西洋上空にある地球磁場が弱い領域「南大西洋異常帯(SAA)」(中央左下)が2025年の地図で拡大していることがわかる(ESA (Data source: Finlay, C.C. et al., 2025) )
地球の表面の磁場強度分布を示した世界地図。上が2014年、下が2025年のSWARMの観測データに基づく磁場強度分布をそれぞれ示している。南大西洋上空にある地球磁場が弱い領域「南大西洋異常帯(SAA)」(中央左下)が2025年の地図で拡大していることがわかる(ESA (Data source: Finlay, C.C. et al., 2025) )

この変化は、地球の深部で磁場がどのようにして生成されるかに関連している。地球の核の液体鉄ニッケル合金が自転の影響で乱流状態となり、電流と磁場を生成する。だが、この磁場は棒磁石のような単純な双極子磁場ではなく、磁力線が交差して複雑なパターンを示している。

「通常、磁力線は南半球の核から出ているのが見られると予想されるが、SAAの下部では、磁場が核から出るのでなく、核の中へと戻っている予想外の領域が見られる。SWARMのデータのおかげで、こうした領域の1つがアフリカ上空で西方へ移動しているのが確認できる。これがこの領域におけるSAAの弱化の一因となっている」と、フィンレーは説明している。

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翻訳=河原稔

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