経営・戦略

2025.12.14 08:00

「ローカルファースト」思考の創業者がイノベーションの未来をつかむ

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現代のイノベーションは、ますますAI中心になりつつある。そして起業家などにとって、身近な地理的エリアの外へとリーチを拡大することは、かつてないほど容易になっている。

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こうしたグローバリゼーション的な意識は、新規事業であれ、確立された事業であれ、成長を加速させ認知度を高める上で、極めて有用だ。しかし、時には創業者が、何もかもをすべての人に普及させようと前のめりになりすぎるせいで、イノベーションの可能性が閉ざされてしまうこともある。

むしろ、前途有望なイノベーションの多くを生み出してきたのは、ローカルに考える創業者だ。特定のコミュニティ、都市、地区、業界を念頭に、極めてローカルな文脈を踏まえてスタートする創業者こそが、有意義なインパクトと、スケール可能な成長のあいだにある、ちょうど良いバランス点を見つけ出している。

切実な課題の多くは、創業者の目と鼻の先に転がっている。「グローバルファースト」のマインドセットは、落とし穴になりかねない。そうした戦略は得てして、高コストで、焦点の定まらないものになりがちだ。敗れ去ったスタートアップの墓場には、現実の問題と結びつかなかったソリューションがあふれかえっている。要するに、グローバルな思考を持ちつつ、まずはローカルに動くことが肝心なのだ。

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「ローカルファースト」なイノベーションの強み

1. ローカルなユースケースを通して、視界がクリアになる

特定の地域や業界セグメントにフォーカスすることで、そのエリアや分野に特有の制約や習慣、文化、インフラ、充足されていないニーズなどを詳しく把握することができる。

例えば、地域の行政機関は今、サービス改善のために、交通管理、インフラ計画、廃棄物収集、公共安全といった分野でAIの活用を進めている。それは、Oracleがまとめたユースケース報告「AI in local government(地方行政機関におけるAI)」からも読み取れる。

ある問題が、特定の地区やユーザー層に根差している場合、一般的な広い枠組みよりも、具体的な問題点の方が重要になってくる。

2. ローカルなデータは競争力をもたらす

AIモデルの質の良し悪しは、データの質に全面的に依存する。地域密着型の創業者は、ほかに把握している人がほとんどいないようなデータにアクセスできる。ローカル市場からは、具体的でマネージしやすい、リッチなデータセットが得られる。

グローバルな消費者データを分析する代わりに、ある場所に存在する特定のパターン、購入習慣、行動、ニーズに特化することで、汎用的で画一的なプレーヤーに差をつけることができる。

3. 有利なビジネス環境はローカルに存在する

イノベーションはしばしば、「クラスター」から誕生する。ここでいうクラスターとは、特定の地域を指す場合もあれば、特定分野への人材、資本、制度の集中を指す場合もある。

例えば、AI研究所、イノベーションパーク、自治体が設けるパイロット事業特区の周辺では、起業が活発化し、雇用が生まれ、成長の波及効果が現れる傾向がある。こうした波に乗り、ローカルな勢いを味方につける創業者は、ビジネスをいち早く成長軌道に乗せることができる。

4. 「ローカルファースト」は、信頼構築を加速する

実体のある価値を示せる企業は、信頼を勝ち取り、それを推進力としてスケールすることができる。地元の住民や企業が抱える問題を解決することで、直接的で率直な、即時のフィードバックが得られる。一方、あまりに早い段階でグローバル展開を目指す創業者は、しばしば手を広げすぎる結果、有意義な指標を示すことに苦戦する。

次ページ > 「ローカルレベルで意味のある形で推進されないかぎり、本物の変化は起こり得ない──現実はそういうものなのだ」

翻訳=的場知之/ガリレオ

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