最初からスケールアップを念頭に、プロジェクトをデザインする
・最初の対象地域で問題解決に取り組むあいだも、将来的な展開可能性を意識する。例えば、モジュール型アーキテクチャ、データ・フェデレーション(分散データを統合せずに「統一的」に利用する仕組み)、ホワイトラベル(専門メーカーが製造した製品を、他の企業が自社ブランド名で販売する方式)の柔軟な利用といったものだ
・ガバナンスと倫理の構築、コミュニティの参画を、発足時から徹底する
AIツールとエコシステムを活用する
・ローカルな導入をサポートするマーケットプレイスやプラットフォームを利用する
・機密データを持ち出す必要性を最小限に抑えるため、フェデレーテッド・ラーニング(連合学習:データそのものを集めず、解析結果など要素のみを統合する機械学習の手法)や「データ・ローカルモデル」の枠組みを検討する
・助成金や、域内イノベーションプログラムを活用する。多くの地方行政機関やそのパートナー組織は、こうしたパイロット事業に積極的に出資している
事業拡大の「次の段階」に備える
・A地点で価値を実証できたら、B地点へ、さらにその先へと展開する計画を立てよう。コアモデルを再利用し、ローカルな変数に合わせて調整しよう
・「ノード(結節点)+ネットワーク」のマインドセットを持とう。1つのローカルノードでの成功は、投資家、顧客、パートナーへの価値証明となる。500の異なるローカルエコシステムに深く浸透している企業は、一枚岩なグローバル企業よりも、はるかに逆境に強い。こうした企業は、グローバルサプライチェーンの断絶や、1つの市場の変化の際にも、ほかの499の市場という、臨機応変かつ安定した忠実な基盤を維持するからだ
先を見据えると、この潮流はさらに加速するだろう。長年語られてきた「スマートシティ」構想は、トップダウンの政府主導による巨大プロジェクトではなく、数多くのローカルファースト・ソリューションによってボトムアップで構築されることになるはずだ
ローカルで始めて、グローバルに飛躍する
次のベンチャーに乗り出すときも、組織の変革を目指すときも、「ローカルファースト」の視点に立とう。イノベーションの未来は、グローバルな主要トレンドのなかだけにあるわけではない。有意義な変化は、まずは自分の足元から始まり、外へと波及していく、と知っている創業者は、未来への鍵を手にしている。この構図にAIを取り入れることで、現在のローカルな取り組みを、未来のグローバルな強みへと、いち早く転換できる。
ローカルなイノベーションに力を入れるからといって、ビジネスがずっとニッチなものであり続けると決まったわけではない。現実には、ニッチな地理的市場を重視する企業はしばしば、イノベーションの勢いを得る。そうした勢いは、ローカル市場から得られるインサイトを見落としがちな業界大手に打ち勝つために必要なものだ。
ローカル戦略からスタートする創業者は、確固たる競争優位を獲得し、長期的成功につなげられる可能性がある。こうした視点こそが、未来の持続的な成長を形づくる原動力となるのだ。


