Personal Dayの評価額は約4000万ドル(約62億8000万円)と推定される。他のセレブが築いた巨大ブランドには及ばないものの、創業14カ月の企業としては順調な立ち上がりと言える。アルタビューティのマーチャンダイジング担当役員リサ・タンブレロは「ラインハートの製品は、従来のニキビケアでは物足りなかった若い世代にしっかり届いている。彼女は消費者の共感を生む独自の領域を見つけ、自身のフォロワーの性質をよく理解している」と述べた。
他のセレブと同様に、ラインハートも当然、自身の知名度をPersonal Dayの成長につなげている。美容業界では、創業者の影響力を背景に評価額を10億ドル(約1570億円)規模へと跳ね上げたブランドがいくつもある。たとえばカイリー・ジェンナーのカイリー・コスメティックスの評価額は2019年、美容コングロマリットのコティが6億ドル(約942億円)で51%を取得した際に12億ドル(約1880億円)となった。リアーナが2017年にLVMHと共同創業したフェンティ・ビューティーは、現在の推定評価額が15億ドル(約2360億円)に達する。今年5月にはヘイリー・ビーバーのロードが、Z世代に人気のプチプラコスメブランドを展開するエルフに、10億ドル(約1570億円)で買収されている。この買収には現金と株式で8億ドル(約1260億円)、さらに売上目標達成時の2億ドル(約314億円)の追加報酬が含まれていた。
しかし、ラインハートは自身の知名度のみに頼るブランドにはしたくないと話す。そのため、商品パッケージには彼女の名前を一切記していない。
「彼女のフォロワーやコミュニティを大切にしつつ、それを超えたブランドに育てたい」と語るのは、Personal Dayでブランドエンゲージメントを担当するビアンカ・フェルナンデスだ。2026年の「30 Under 30」のマーケティング&広告部門に選ばれた彼女は今秋、テレビ司会者でコメディアンのジミー・ファロンが手がけた広告コンペ番組『On Brand』で優勝した。
Personal Dayはすでに1万人を超えるクリエイターと連携し、TikTok向けの動画を広く発信している。また、ブランドの認知拡大だけでなく、TikTokのショッピング機能「TikTok Shop」での販売も軌道に乗りつつある。「TikTok Shopには大きな成長余地がある。ソーシャルコマースが本格的に成立する唯一の場だと考えている」とフェルナンデスは語る。
拡大が続くスキンケア市場の競争は激化している。すでに特定のブランドのファンになった人々に乗り換えを促すのは困難で、とりわけPersonal Dayが狙うニキビに悩む層はその傾向が強い。さらに、コロナ禍以降は顧客がセルフケアに割ける時間が減り、購入する商品の数も少なくなっている。「いまの顧客は多機能な製品を求めている。自宅で仕事をしながら、11ステップのスキンケアをする時代ではなくなった」とアルタビューティのタンブレロは指摘する。


