起業家

2025.12.12 12:00

青春ドラマで注目の29歳女優が設立の米スキンケア企業、創業1年で評価額63億円に

リリ・ラインハート(Photo by Amanda Edwards/Getty Images for SAG-AFTRA Foundation)

リリ・ラインハート(Photo by Amanda Edwards/Getty Images for SAG-AFTRA Foundation)

人気の青春ドラマ『リバーデイル』で注目を集めた29歳のリリ・ラインハートは長年、ニキビに悩まされた結果、自らスキンケアブランド「Personal Day」を立ち上げた。TikTokのフォロワーの多さを武器にする彼女は、米フォーブス「30 UNDER 30」に名を連ねた後に、売上1000万ドル(約15億7000万円)の企業を築き上げた。

2011年、当時14歳だったラインハートは、母親とともにミニバンに乗り込み、クリーブランドからニューヨーク市まで8時間かけてオーディションに向かった。彼女は、『The Most Girl Part Of You』という15分間の短編映画の役を勝ち取った。そして2017年には人気のドラマ『リバーデイル』でベティ・クーパー役を演じ、7シーズン続いた同作によって一躍スターダムに駆け上がった。彼女はまた、『ハスラーズ』『ケミカル・ハーツ』『2つの人生が教えてくれること』などの映画にも出演した。

かつての時代なら、映画業界での知名度を誇る彼女のスキンケアブランド「Personal Day」の成功は、確実視されたはずだ。しかし、SNS時代のいまは状況が異なる。彼女のチームはまず、ソーシャルメディア上の存在感を高める戦略に出た。ラインハートは、クランブルのクッキーの箱を手に、TikTokのインフルエンサーへの道を歩み始めた。

29歳となったいま、フォーブスの「30 Under 30」にも選ばれたラインハートは、この戦略がうまくいったと語る。彼女のフォロワーは、TikTokで750万人、インスタグラムで2400万人に達している。

クッキーの動画は、数千万回も再生されたが、それだけでスキンケア商品の販売にはつながらない。そこでラインハートは、ささやき声や箱を開ける音、クッキーをかじる音など、心地よい音を聞かせるASMRのコンテンツや、スキンケアのプロセスを映した動画にも取り組み始めた。その一部は4000万回を超える再生数を記録し、スキンケアに熱心な層を新たに引き込んだ。

彼女が立ち上げたPersonal Dayの背後にあるストーリーも、SNS上で響くものだった。長年ニキビに悩んできたラインハートは、水を加えて使う洗顔パウダーやリップバームなど、自分が本当に欲しかった製品づくりを目指した。「完璧な肌の人が多い業界のなかで、自分だけが取り残されているように感じていた」と彼女は振り返る。

創業1年で企業価値63億円に

2024年10月にローンチしたPersonal Dayの初年度売上は、推定1000万ドルに達した。2025年9月には米国最大手の化粧品小売チェーン、アルタビューティの700店舗で販売が始まり、初月で商品ラインの約半分が売り切れた。なかでも人気が高いのは、肌を整えるスプレーや落ち着きを与えるマスク、小鼻の汚れを溶かすストリップ(鼻パック)といった製品で、いずれも遊び心のある名前が付けられている。

次ページ > 自身のフォロワーの性質をよく理解している

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事