作家報酬は4年で22倍に ヘラルボニーが「違い」を価値に変えるまで

ヘラルボニー共同代表の松田文登(左)と松田崇弥(右)。壁にかかっている作品は「Untitled #1」松岡一哲×吉田陸人

そんななか、経済産業省が主催するこのアワードで評価されたことの意味を、崇弥に尋ねると、「ビジネスとして認められたということ。それが嬉しい」という。「でもまだスタートラインです。世界中の人がヘラルボニーを当たり前にブランドとして、IPとして認知する。そこを目指しています」。

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「儲けること」の意味

2024年にはパリに「HERALBONY EUROPE」を設立した。今年9月にパリ・ファッションウィークにも参加し注目は集まっているが、「大事なのはここからどう進んでいけるか。トントン拍子にはいかないですが、絶対登れる壁を前にしている感じ」と文登は言う。

この先に目指す姿として、フィンランドのテキスタイルブランド「マリメッコ」や日本の「サンリオ」を例に出す。

例えばマリメッコは、全世界で均一な展開をしているわけではなく、フランスならフランスの作家の絵柄を起用し、現地の人が運営する。「福祉においてもその国のだからこそわかる葛藤がある」からこそ、へラルボニーのパリ拠点もいずれは現地に任せたいと考えている。

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サンリオにおけるピューロランドのように、ヘラルボニーのIPを軸にした体験型施設も構想中だ。障害があるかないかではなく、違いのある人たちが愛される場所。「障害のある人たちが働く場所を、ヘラルボニーが創出していくようなことをしていきたい。事業とは別の形で実現できるような計画を立てている。」という。さらにその先には、特別支援学校ではなく「誰もが入れる学校」なども理想として構想している。

最後に「儲けること」へのスタンスを聞くと、「大きくなることが楽しいんです」と崇弥。「作家さん、親御さん、施設の職員の方。社会を前向きに変えられることが、大きくなっていくのを感じられるから」とまっすぐに答えた。

作家報酬が増え、確定申告をする作家も現れた。その先に何があるのか。

「作家さんたちがお金持ちになるならば、守る仕組みも考えていきたい。当時は考えたこともなかった、嬉しい悩みです」(崇弥)。

文登が続ける。「どこまでいっても、根底にあるのは兄の豊かで幸せな形をつくること。社会との調和を大切にしながら、そこを目指していきたい」

文=青山鼓 人物写真=山田大輔 編集=鈴木奈央

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