人工生命や仮想空間などのテクノロジーは、人間本来の「身体」のありように問いを投げかけている。「動き」とテクノロジーのクロスポイントで活動する電通のクリエイターたちにポストヒューマンのクリエイティビティについて聞く第4回目は「聞く」からひらかれる新しい世界像。
——Dentsu Lab Tokyoでテクノロジーを起点とした新しい表現開発を仕事にされていますが、かなり突き抜けたものを世に出していますよね。脳波センサと連動した猫耳型のコミュニケーションツール「necomimi」とか。
なかの:世の中にまだないけれども、未来にはありそうな体験を試作しています。リサーチでは、テクノロジーやカルチャーの分野で、今どういったものが注目されていて、人はどういう気分なんだろう、みたいなことをとらえるようにしています。仕事で海外の展示会の視察にも行っています。
——今年はどんなところに?
なかの:6月にフランスで開かれたスタートアップの展示会、「Viva Technology(Viva Tech)」に行かせてもらいました。今年はGTCという、Nvidiaが主催するAI関連のカンファレンスと共催だったものですから、両方見ることができました。そのレポートを電通報やラボのnoteに書いたり、「今、こういうのが来そうですよ」という話をご相談があった方にしたり、自社のR &Dに生かすようなことをやっています。
面白いなと思ったのが、自動運転技術が転用されて、目の見えない方が外出するためのデバイスに生まれ変わっていたことです。歩行を支援するヘッドセットを数社が出していたので、大きな動きにはなるなと思って見ていました。
ウイスキーグラスにたしなめられる
——「今、こういうのが来そうですよ」というのは、どうやってキャッチするんですか?
なかの:いまお話したようなカンファレンスなどで最先端のものに触れる以外だと、常に「文脈を機にする」ということでしょうか。
パンデミック中の一時期、金継ぎの教室に通ったんです。世界中が壊れた状態になった時に、もう一回直すことが癒しになるという文脈があったようで、人が自分自身を癒しながら地球を癒せる方法として、金継ぎを選びました。
それで金継ぎの技術を生かしたプロジェクトを仕事でも始めてみました。サステナビリティに関して何ができるかを考えての、テクノロジーと表現の掛け合わせです。
そのなかで生まれたのが、割れた器に電子的なパーツを組み込んだ「飲むペースが速いとたしなめるウイスキーグラス」です。
——たしなめられてみたいです。どんな仕掛けなんですか?
なかの:傾きセンサーとLEDを入れることで、グラスの一部が赤く光るんです。ウイスキーのストレートだと、グラスの傾く頻度が高いとペースが早いということですからね。それを光で警告。



