チームの増収とコストキャップ制度が、ドライバー報酬の引き上げを後押し
F1ドライバーの報酬が全体として上昇している背景には、いくつかの要因がある。まず、F1の商業面の成長だ。スポンサー契約の増加や、F1がチームに支払う分配金の拡大によって、チームの収入は昨季、平均4億3000万ドル(約667億円)に達した。F1チーム自体の価値も大きく上昇しており、チームの平均評価額は、2023年の19億ドル(約2945億円)から2025年は36億ドル(約5580億円)へと跳ね上がった。
こうした収益力と資産価値の伸びが、ドライバー報酬の引き上げにつながっている。
それと同時に、2021年に導入された「コストキャップ(マシンの設計・製造・運用など、競技車両に関連する支出の上限を定める制度)」が、チームが使える資金を大きく制限している。今季の上限は約1億7000万ドル(約264億円)に設定されており、チームはこの枠の中でマシンを開発しなければならない。
ただし、ドライバーの給与はコストキャップの対象外とされている。そのため、チームが戦力強化を図る際、ドライバーへの投資は数少ない自由度の高い支出項目となり、結果として報酬が上がりやすい環境が生まれている。
F1ドライバーの報酬は基本給とボーナスが主体、一部のドライバーはコース外収入も
F1ドライバーの報酬は、ストロールのように財務資料や訴訟で一部が明らかになる場合を除き、基本的に公表されない。ただし、契約の構造は一般的に知られている。大手チームに所属する経験豊富なドライバーは高額の固定報酬を受け取り、レース結果やタイトル獲得に応じたボーナスが加わる。キャリアの浅いドライバーや小規模チームのドライバーは固定報酬が比較的低いものの、成績に応じて多額の報酬を得られる場合がある。
F1ドライバーは、スポンサー契約などのコース外収入で稼ぐことも可能だ。しかし、サッカーやNBA選手を対象とするフォーブスによる収入ランキングとは異なり、F1の収入ランキングは、基本給とボーナスのみを対象としており、コース外収入は含めていない。
チーム契約の制約がある中でハミルトンはコース外収入を獲得、フェルスタッペンは総収入で圧倒
実際には、個人でスポンサーを増やす余地はそれほど大きくない。チームとの契約上の義務や、チームスポンサーとの競合を避ける必要があるためだ。そうした制約の中で、現在もっともスポンサー価値が高いのがハミルトンで、2025年5月までの12カ月で推定2000万ドル(約31億円)のコース外収入を得ていた。この額により、ハミルトンは、フォーブスの2025年版「世界で最も稼いだアスリート」ランキングでは22位に入った。フェルスタッペンの同期間のコース外収入は推定600万ドル(約9億3000万円)だった。
それでも、フェルスタッペンの収入は群を抜いている。今季の収入7600万ドル(約118億円)を加えると、過去5年間で彼が稼いだ総額は3億2300万ドル(約501億円)に達する。今季の王座を逃した悔しさも、この収入がいくらか和らげてくれるかもしれない。


