しかし、重要なのはここからだ。ほかのセクターでは原材料コストが上昇すると需要が低下するかもしれないが、データセンターの開発業者は総じて銅価格への関心が薄い。実のところ、調査会社のウッドマッケンジーによると、銅がデータセンター建設の総事業費に占めるコストは0.5%足らずで、誤差程度のものとなっている。
つまり、データセンター向けの銅の需要は、価格が上がってもたいして減らない。銅が1万ドルで取引されていようと2万ドルで取引されていようと、データセンターは建設され続けるだろう。
2035年までに銅は30%の供給不足に陥る可能性
筆者の考えでは、銅に関して投資家がとくに留意すべきなのは次の点だ。銅は需要がものすごいペースで加速している一方で、供給は構造的な制約に直面しており、これはたんに蛇口をひねれば済むような問題ではない。
アナリストたちは警鐘を鳴らしている。最近開催された重要鉱物に関する会合で、IEAのアナリストは、銅は2035年までに最大30%の供給不足に陥る方向にあると指摘し、世界のサプライチェーン(供給網)で最も脆弱な金属のひとつになっていると警告した。
ウッドマッケンジーの予測では、世界全体の銅需要は2035年までに24%増加し、年間4300万トン近くに達する。この需要を満たすには、業界は採掘能力を年に800万トンのペースで増やしていき、合計で2100億ドル(約33兆円)を超える投資を行う必要がある。
比較のための数字を挙げておけば、ウッドマッケンジーによると銅採掘への過去6年間の投資総額は760億ドル(約12兆円)ほどにとどまっている。
採掘のボトルネックをどう解消するか
誤解のないように言っておくと、地中の銅が枯渇しそうになっているわけではない。米地質調査所(USGS)の推定では、米国内だけで銅資源の確認埋蔵量は4800万トンあり、これは米国の需要を数十年賄うのに十分な量だ。
問題は、その銅鉱石から使用可能な銅を取り出す作業を、十分なスピードと規模で行うのが難しいという点にある。新たな供給元を急いで開発したくても、現実には不可能なのだ。米国で新しい銅鉱山を稼働させるには平均19年かかり、世界最長クラスだ。


