その後、カステリオンはわずか3年足らずで米軍から1億ドル(約156億円)超の契約を獲得し、その実績を背景に累計で4億5000万ドル(約702億円)の資金を確保した。12月5日に発表された、ライトスピード・ベンチャー・パートナーズとアルティメーターが主導したラウンドでは3億5000万ドル(約546億円)を調達し、評価額は28億ドル(約4370億円)に達した。「極超音速兵器は、伝統的な防衛大手だけが手掛けられる領域だった。しかしカステリオンは、私がこれまで見たことも、想像したこともないスピードでその壁を破った」と、同社の初期投資家であり、アンドリーセン・ホロウィッツが運営するファンド「アメリカン・ダイナミズム」創設者のキャサリン・ボイルは語る。
3人は、極超音速ミサイルの課題がコストの高さ、生産数量の制約、開発にかかる長いリードタイムにあると理解しており、これを根本から変えるためにスペースX流のアプローチを採用した。従来のメーカーがミサイル部品を外部サプライヤーから個別に調達するのに対し、彼らは可能な限り自社で設計・製造する方針を選んだ。外注した方が安上がりな場合もあるが、ピットは防衛産業のサプライヤーに依存せず、自動車業界など異業種から金属ケースやゴム製アタッチメントを調達することでコスト削減を実現した。
この戦略により、カステリオンの開発スピードは飛躍的に向上した。他のメーカーが部品調達に数ヵ月を要するのに対し、同社は同じ期間で開発・試験・改良のサイクルを複数回実施できるという。実際、同社は今年だけでミサイル試験を20回以上実施しているが、他社は年間数回にとどまる。「垂直統合モデルはコストがかかるが、市場投入までのスピードは圧倒的に速い。市場に先駆けて参入することで得られる学びの価値は、計り知れない」とスコフィールドは強調する。
頻繁にテストを行うため、カステリオンは従来とは異なる場所を選ぶ必要があった。「砂漠のネズミ」を自称する十数名のエンジニアチームが、黒いネズミのイラスト入りパーカーやシャツを着て2週間ごとに遠隔地へ向かった。その一つが、音楽とアートの祭典『バーニングマン・フェスティバル』の会場として知られるネバダ州のブラックロック砂漠である。「航空宇宙エンジニアたちが砂漠に現れたかと思えば、一週間後にはフェスティバルの参加者が押し寄せ、さらにその翌週には再びミサイルを打ち上げるチームが戻ってくる」とピットは言い、一週間続いたフェスティバルの痕跡に出くわすエンジニアたちの姿を思い出して笑った。


