とはいえ、こうした比較は先述した地質や環境の違いを考慮すると、公平でも有益でもない。さらに、四川盆地の複雑で要求の厳しい坑井の掘削事業に、中国企業がまだ慣れていないことも否定できない。シェール開発大手のシノペックとペトロチャイナは、四川盆地をはじめとする国内の盆地で慎重な姿勢を貫いている。中国では2012~22年に約3000本のシェールガス井が掘削されたが、これは最初のシェールガス開発地であるバーネットシェールを2000~05年の5年間で開拓した米企業による掘削本数と比べると桁違いに少ない。
中国のシェールガスの未来
中国政府は自国のシェールガス生産量が2024年の約255億立方メートルから、2040年までに最大990億立方メートルまで増加すると見込んでいる。だが、中国が輸出国になるには程遠い。同国の2024年の天然ガス消費量は4200億立方メートルで、向こう15年間で消費量は50%以上増加すると予測されているからだ。しかし、シェールガスの成長は計画や予想より急速に進んでいる。将来の大規模なシェールガス層の発見を考慮すると、今後中国の天然ガス輸入の負担は軽減されるかもしれない。
つまり、中国政府がシェールガス計画を拡大し続けたいと考える主な理由はエネルギー安全保障だ。石油と天然ガスは現代においてもなお戦略的資源であり、大国であってもこれらの供給を他国に深く依存していれば、国家安全保障上の懸念を抱えていることになる。
中国政府がシェールガス計画に取り組む第2の理由は気候変動対策だ。同国の石炭消費量と二酸化炭素排出量は、北米と欧州連合(EU)の合計を上回る。ある意味で、中国政府が化石燃料の使用に関して下すあらゆる決定は、良くも悪くも世界的な影響をもたらす。特に石炭消費を大幅に削減する決定を下せば、炭素排出量も減ることになる。本稿は中国が気候変動をどの程度懸念しているかについて深く掘り下げるものではないが、欧州投資銀行(EIB)の最近の調査によると、中国人の73%が気候変動を社会が直面する最大の課題だと認識していた。これは米国の39%、欧州の47%を大きく上回っている。
最後に、中国の視点から見れば、成功は自らを育むと言えるだろう。シェールガス資源は無視できないほど膨大であり、具体的な成果は予想を上回っている。20年以上にわたり、中国政府の5カ年計画の中核目標は、国内のエネルギー資源を開発することだった。開発の開始当初は慎重だったが、シェールガスは現在、同国の計画の中で重要な位置を占めている。


