未知なる味覚である湖南料理や雲南料理
韓国在住歴も長い前出の堀田さんは、今回の食事会について次のようにも書いている。
<今回の食べ比べによって、広大な中国では、地域ごとに辛さに歴然とした違いがあることがわかりました。四川料理は香り高く、湖南料理はダイレクトに届き、雲南料理は中国の味に加えて東南アジア風の異国の香りを漂わせている辛さ、という印象です。
私自身、辛さ遍歴はかなりあるほうなのですが、激辛好きというより、辛さの向こう側にある特有の香りに出会いたい、という気持ちで食べている気がします。在韓生活が長かったので、韓国料理の辛さにも慣れ親しんでいますが、中国料理の辛さとは、別物です。
数年前まで、韓国では麻辣(しびれ)の辛さは、一般的にほとんど受け入れられていませんでした。中国からの留学生が増えたことから、街中にガチ中華も増え、本場の中国料理が身近になったのです。いまでは日本と同じように、火鍋や麻辣湯ブームが起きています>
ここ数年のマーラータンのブームの発祥地でもあるが、辛さで知られるガチ中華の筆頭は四川省や重慶市で食べられている四川料理だろう。
今年7月下旬、四川料理店「陳家私菜」の創業30周年パーティーが開催されたことを、以前に筆者は書いたが、同店は今日の麻辣豆腐ブームの火付け役であり、刀削麺やよだれ鶏といった香り豊かな豆板醤を使った本格的な四川料理を日本に持ち込んだ店でもある。
オーナーの陳龐湧(ちん・ばんゆう)さんは上海出身で、1986年来日。都内に1号店を開いたのは1995年と早く、羊肉を使った中国の東北料理を広めた味坊集団の梁宝璋(りょう・ほうしょう)さんとともに、日本の「ガチ中華」を代表する人物である。
この2人を、筆者は「ガチ中華第一世代」と呼んでいる。そして彼らに続く若い世代のオーナーたちについては、4年ほど前に「中華料理店の変遷、『東京ディープチャイナ』を支えるオーナーたち」というコラムで次のように書いている。


