サイエンス

2025.12.11 18:00

恐竜絶滅後も生き残った「世界最大のウミガメ」、直面する現代の脅威

Shutterstock.com

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進化は、地球上の生命に対してさまざまな並外れた適応を授けてきたが、なかでもとりわけ驚くべき生物は、皮肉なことに、長きにわたりほとんど変化していないものたちだ。

カメは、現生の脊椎動物のグループのなかで屈指の古い系統であり、最古の祖先種は実に2億2000万年以上前の三畳紀後期にさかのぼる。これは恐竜の系統が出現して間もない頃だ。

恐竜は6600万年前に姿を消したが、カメたちは、どうにか生き延びた。太古の時代にルーツをもつ種のなかには、今なお大海を泳ぎつづけているものがいる。それが、オサガメ(学名:Dermochelys coriacea)だ。彼らは、ティラノサウルス・レックスよりも前の時代にさかのぼる、古代の系統に属するだけでなく、その直系の子孫なのだ。

生物学的に見てオサガメは、こうした太古の世界を垣間見せてくれる貴重な現生種だ。オサガメの生理的特徴や繁殖戦略、老化への耐性は、極限の淘汰圧のなかで生命がいかに進化してきたかを物語っている。

三畳紀から生き抜いてきたオサガメ

オサガメが今なお生きつづけていることの意味を理解するには、背景として、三畳紀後期とはどんな時代だったのかを考える必要がある。

2億2000万年前のオドントケリス(Odontochelys semitestacea)や、2億1000万年前のプロガノケリス(Proganochelys quenstedtii)といった古代のカメの化石から、これらの種が三畳紀に、すでにカメ特有の構造である甲羅を備えていたことがわかっている。そして、オサガメの分岐は、現生のウミガメの中では最も早期の系統の一つだ。

現生のカメのほとんどは、極めて硬い骨質の甲羅をもつが、オサガメはこれとは異なり、革のような質感をもつ柔軟な甲羅を、分厚い結合組織の内部に埋めこまれた複数の小さな骨が支える構造をしている(英名レザーバック・タートルの由来)。この特徴に基づき、オサガメは、独自の科であるオサガメ科(Dermochelydae)に分類される。

オサガメ科がほかのウミガメと分岐したのは、推定で約1億~1億5000万年前だ。長い進化の歴史のなかで、オサガメ科の種は、たった一つの種を除いてすべて絶滅した。オサガメは、この科で唯一の現生種なのだ。

古生物学的証拠から、オサガメを含む系統は、地球上の生物種の約75%を一掃した白亜紀末の壊滅的な大量絶滅を生き延びたことがわかっている。現生のオサガメは、古代の種とはあくまで親戚であって、同一ではない。それでも、彼らの系統は、巨大な海生爬虫類が海を支配していた頃から、途絶えることなく続いてきた。

極限の生活への適応

オサガメは、世界最大のカメだ。体重はしばしば900kgを超え、全長は2.5mに達する。しかしその巨体は、彼らの驚嘆すべき特徴のごく一部でしかない。本当に注目すべきは、オサガメが備える生物学的イノベーションの数々だ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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